第12話 [化け物の体力測定]

 一、二時間目が終わり、次の三、四時間目は体力測定をするらしい。

 教室から女子が出た後、俺たちは着替えを始めた。


「おお……今まで隅っこでこっそり着替えてたからわかんなかったけど、お前ムキムキだな」

「これぐらい普通じゃないか?」

「強谷の普通は普通じゃない気がする」


 いつものジャージに着替え終わった俺たちは体育館シューズを持ってあ教室を出た。あとでグラウンドに行くとも聞いたので、靴も持った。



###



「よしッ! よくきた、君たち! 今から体力測定行うからねッ!!」


 体育の先生は担任の八木林だった。そう、あのムキムキ先生だ。

 体力測定ということで、嫌そうな顔をするものや、ワクワクした顔をするものがいた。


「そんじゃッ、体力測定の記録用紙配るから後ろに回してねッ!!」


 記録用紙が配られた。どうやら体力測定は八項目あるらしい。そして、最初は握力を測るようだ。


「男女別で、二人一組になって測定するようにッ!」


 各々が二人人組を組み始める。俺は朔に声をかけられた。


「強谷、やろーぜ!」

「ん、いいぞ」


 少し場所を移動し、握力を測る器具が置いてある場所まで行った。そして早速、朔が測り始める。


「よしっ、行くぞ! ふんぬぅっ!!」


 朔の記録は右が60kg、左が53kgだった。


「うぉ〜〜、最高記録でたぜ!」

「そうなのか、おめでとう」

「興味なさげだな……」


 交代し、俺が測る番だ。右手にその器具を持ち、ぐっと力を込める。


「えーっと……エラー? 先生に違うやつ持ってきてもらうか?」

「ん〜? あっ」


 もしかしたらと思い、リセットもう一度それに力を込めた。だが今回は少し力を弱めて行った。


「強谷の記録はー……84kg!? ゴリラかよ!!」

「それ褒め言葉?」

「うん。今度からマウンテンゴリラって呼んでいい?」

「絶対やめろよ? もし言ったらお前の頭砕く」

「マウンテンg……」

「なんか、言ったか??」

「なな、なんでもないですん……」


 左も同じように力を弱めて測ると、78kgだった。「やっぱマウンテンゴリラだ」と言ってきた朔には、頭鷲掴みの刑に処した。


 握力の次は上体起こしだそうだ。

 体育館のマットが敷いてある場所まで移動し、早速俺からスタートだ。


「んじゃ……始めッ!」

「ふんっ、ふんっ、ふんっ、ふんっ」

「ぬわァーッ! 何コイツ速ッ!!」


 ビーーッというタイマーの音が鳴ると同時に上体起こしをやめる。なぜか疲労としている様子の朔から結果を聞く。


「き、記録は……72回」

「あんまりだな」

「どこがだよ!」


 ジロジロと視線を感じる。抑えたつもりだったが、結構目立ってしまったな。


「次は反復横跳びだが……。強谷、お前は次に影分身の術を使うだろう」

「いや、普通にやるけど……」


 まあ分身は……使えるんだけどね。

 線が引いてある場所に移動し、タイマーが鳴ると同時に反復を始める。

 その時の体育館は、まるで銃撃戦が行われているんじゃないかと思うぐらいの轟音が鳴り響いていた。


「お……俺はもう驚かん」

「僕も」

「私も」

「わちきも(遊女)」

「某も(武士)」

「儂も(仙人)」


 次は長座体前屈。尻をつけて足を伸ばして座り、目の前の段ボールを動かすだけのもの。

 腹と足をぴったりつけて段ボールを動かしただけだ。朔からは「軟体動物」と言われた。


 順調に進み、次はシャトルラン。体育館の端から端まで往復するものだ。一定の時間が経ったらスピードを早めないといけないらしいが、まあ簡単だな。



###



「おい強谷! もう上限達したから強制終了だ!!」

「なんだ、もう終わりか」


 俺は息を荒くすることなく終了した。

 朔はまだまだ行けそうだったが、途中で面倒になったのか抜けてしまった。


「朔、次はなんだっけ?」

「立ち幅跳びだ。……飛びすぎて壁に激突すんなよ?」


 確かにありえそうだな……。少し抑えて飛ぶか。

 そう思ってでた結果がこれ。


「さ……375cm……」

「普通ぐらいか」

「「「「「どこがだ!!」」」」」


 クラスメイトになぜか叱られた。解せぬ。


 少しだけ休憩を挟んだ後、残りの二項目はグラウンドでの測定らしい。

 最初に行うのはハンドボール投げだ。


「よし、行くぞ〜〜」


 俺がみんなに声をかける。


電磁砲レールガンが来るぞォォ!」

「いいや、上からロードローラーが来るぞッ!」

「守備を固めろ〜!」

「みんな……死ぬんじゃねぇぞ☆」

「俺ぇ、この体力測定終わったら結婚するんだ(大嘘)」


 何やら楽しそうに会話をしているが、俺は気にせず手にしていたボールを投げる。


「えー……。82メートル!!」

「イマイチか……」


 本来ならばもっと飛ばせれるんだが、流石に目立ちすぎそうだったからやめておいた。


 最後の種目は50メートル走だ。

 たったの50メートルだったら刹那のうちに移動できるが、まあ5秒ぐらいにしておこう。


 白線が引かれている場所まで移動し、クラウチングスタートの構えをする。うっかり瞬間移動してしまいそうで怖いな。


「ヨーイ、スタート!!」


 先生の合図とともにスタート。体内時計で数えながら走り、目標のタイムに設定する。


「強谷の記録は5.1秒!」

「よし」


 目指したタイムに限りなく近かったからよしとしよう。


 全項目を終えた俺たちは、そのまま教室へと帰る。俺以外のみんなは疲労困憊の様子だった。

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