ニ十口目 召喚⁉
何とも
鶏ってのは実に
それはこの世界でも変わらないらしい。被食者である鶏の優先順位は決して高くはないのだ。
技術や医療、それは言わばあったら便利な課金アイテムってところか。所持していなくても鶏生
そもそも明確なクリア条件なんて提示されていないし、加えて開発元も不明で、悪質なバグが発生し放題の遊戯なんてインストールすらしたくもない。だが、それでもこの世に生を受けた者は強制的にプレイさせられるのだ。
操作するキャラクターくらいはちゃんと選択させてほしかったけれど――
ドサッ。
……っ、
突然、俺は空中に放り出され、顔面から地面に落下したように感じた。これまた
しかし、前回と違って痛覚があり、自分の意志で自由に身体を動かすこともできる。
俺は不思議に思いながらも頭部と思しきパーツを動かしてみることにした。
「ふぁ……っ、んっ……」
少女の、ちょっと鼻にかかった甘い声が、届いた。
……ん?
再び頭を、今度は顔面を押しつけるようにして上下に動かしてみる。
「んんんっ、ふぁぁぁああぁっ……!」
先程よりも大きく、そして
……んん?
さらに上下運動を続けていると、
「ひゃうっ、やっ……ふうぅ、ぁあぁぁん……!」
さらに激しさを増す、少女の喘ぎ声……みたいなやつ。
俺はもぞもぞと
途端、暗闇の世界に光が差し込む。白色と黄緑色の
「……よいしょっと」
俺は、ゆっくりと顔を上げた。そこには、
「はぁ……はぁ……、んっ……」
瞳は濡れて、頬は薄桃色に染まり、荒い呼吸に肩が上下する。
……なんかエッチだ。なんかこう……凄くエッチだ。
彼女がこんなふうになってしまった原因は、間違いなく俺にある訳で。この場合まずは謝罪をすべきか弁明をすべきなのか、教えてくれよワトソン君。
流石に市場の二の舞を演じるのは御免だし、そう易々と喋るわけにはいかないのだが――そう思った矢先、
「……っ⁉」
蜜柑髪の少女と、ばっちり目が合った。
綺麗な
……察しが悪い俺でも今後の展開を予想することができた。
ああ……終わった。さよならグッバイ、俺の
そんなものは始めから存在していないだろう、と自分自身に対してツッコミを入れる前に俺の視界は
気絶する直前に
◇◆◇
「……ゃない……か!」
「そう……も……は……すから」
「……をなん……して……さい!」
地面にうつ伏せになっているので顔は見えないが、そのうち一人は何かに
……ここはどこ……っ、頭痛え……。
起き上がろうとした瞬間、
仕方がないので身体を動かすのを
「お願いしますっ! もう一度、もう一度だけで良いですから!」
「ダメです。許可できません」
「そこをなんとか……!」
「規則で決まっている事ですから。残念ですが、認められません」
その声のする方を見ると、小綺麗な中年女性に何かを
「な、納得できませんよ。だって、こんなの絶対におかしいじゃないですか!」
「それは……」
と、二人がこちらを見たので、俺は慌てて目を瞑った。
状況から推測するに、何か、想像もつかないような事態が起こっているのだろう。しかもその元凶が俺であり、それこそがここにいる理由であると反射的に考え、俺は横になったまま彼女達の会話に聞き耳を立てた。
「この儀式は、天の御加護をその身に
「はい。聖リセト零化学院の学生が立派な〈零化士〉になるための、大切な儀式です」
れいかし? ……あっ、これ進〇ゼミでやったやつだ!
「大切な儀式だからこそ、あたしが
「そうですね……その
めりゅじおん? りんぐ……指輪か?
「でも見てくださいよ、あれ。先生にはあれが何に見えますか?」
「何も見えません。見ていません」
「鶏ですよ、に・わ・と・り! しかも、とびっっっきり変な鶏ですよ!」
「……聖霊竜皇様の御意志であれば、私達にできるのは
うわあ……今、中年女性は絶対にチラッと俺のことを見て、それからすぐに視線を
「いや、御意志じゃなくて誤意志ですよねっ⁉ どう考えたって」「聖霊竜皇様の御意志であれば、私達にできるのは粛々とそれを受け入れる事だけなのです」
女性教諭は少女の言葉を
だがまあ、学院の関係者ですら知らないような事が起こったのならば、その気持ちも分からないではない。きっと、俺の想像よりも遥かにとんでもないことに巻き込まれているのであろう。
ど◯でもドアもといどこでも小屋から別の場所に転移した時点で、俺にとっても十分とんでもないのだけれども。
「……とにかく、これ以上この件について私から申し上げられる事はありません。先程もお話ししましたが、私のような一教師……ましてや一介の学生がどうこうできる問題ではないのです」
「そ、そんなぁ……」
背中越しに、少女の落ち込んだ声が一つ。
そのしょんぼりした姿が容易に想像できて、何だかとても申し訳ない気持ちになった。
……うーん。
困っている女の子がすぐ近くにいるというのに、今の俺にできることは何もない。この小さな翼では、少女の手を優しく握ってあげることすらできないのだ。
俺は、自分がどんなに非力な存在なのか、つくづくと思い知らされた。
容姿が変とか能力がどうとか、もはやそんな上辺だけの事ではない。次から次に降りかかってくる災厄の
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