#22 勝負のヴェロニカ、春輔はブチ切れ




鬼島はホストをしているのか。そのホストが久米夢実ちゃんをめたらしいんだけど、夢実ちゃんの性格的に、ホスト遊びをするような子に見えないんだよな〜。

いや、なんていうかさ……ストイックなイメージあるからさ。



ところで、俺みたいな……いや、そもそも男がホストクラブに来るのってアリなの?

そもそも夜の街に疎くてまったく分かんねえよ。

俺一人が客としているだけで異様な雰囲気だぞ。



「は〜〜〜い、ヴェロニーで〜〜〜すっ!! 鬼島さん指名しま〜〜す」

「ヴェロ姉、ホストクラブなんて来たことあるんですか……!?」

「あるわけないでしょ。ドラマの一夜漬けで勉強してきた」

「……リオン姉はあるの?」

「ない。飲み比べする場所なのだろう?」



ダメだこりゃ。

そもそも、宮島凜音みやじまりおん紫音しおんの姉妹は……親が酒乱だったってヴェロニカから聞いたけど。


その家庭環境でよく酒なんて飲めるよなって思うだろ普通。けど……七家六歌なないえりっかさん見ていたら納得。そもそも、自分を取り巻いてきた逆境をむしろ糧にして、出会い自体をラッキーだったな、なんて三姉妹は思っている節さえあるよな。



美羽が……あの美羽が腐らずに魅力的な人になったのもなんだか納得だよ。

やっぱり……俺……美羽のこと好きだわ。




って感傷的になっている場合じゃねえな。それよりも……こいつら酒が入るとロクなことがないんだよなぁ。

不安しかないっていうか。

VS鬼島だーっ!! やんぞこらーーーッ!!

って張り切ったのはいいけど……酒に飲まれて返り討ちだろ……これ。



「ご指名ありがとうございます。鬼島恵介おにしまけいすけでございます」



うわ……ズグエニの大人気RPGのキャラそのまんまじゃねえか。カッコいい…‥か?

一周回ってコスプレイヤーにしか見えねえ。髪の毛なんて尖っていて凶器じゃねえか。

カラコンはブルーで、なんだか金髪のとんがり頭に似合って……ない。

こいつをカッコいいと思えねえのは、なにか行動するたびにウィンクするからだ。

気持ち悪いにもほどがある……。



「お、鬼島さん、なんだか髪型とカラコンが似合っていません……」

「シ、シナモンちゃん……正直すぎッ!!」

「おい、とんがり頭。久米夢実くめゆめみの仇討たしてもらう。覚悟ッ!!」

「リオン姉も馬鹿正直すぎッ!!」

「……っていうわけよ。もし悪いと思っているなら、あたし達に協力して」

「……ああ、そういうことでしたか。お客様ではなかったのか。あんたら、自分から敵だって告げて勝てるとでも? そもそも、久米夢実と俺は自由恋愛をしていただけだぜ? そこにイチャモン付けられてもなぁって、失礼な奴らだな!! お引取り願おう」

「そうよ。鬼島くんが何か悪いことでもしたのかしら?」



……なぜかド派手なドレスを着た萌々香が登場。って、なんで萌々香がいるんだよ。こいつ、どこにでも出現するな……。萌々香もドレスなんて着ているけど、なんだかケバいというか。なんだかエグいなぁ……あぁ胃が痛ぇぇぇ。



「白井萌々香……あんた、自分で言っていて胸が痛くないの?」

「なんのこと? この泥棒猫」



萌々香のやつ、今日はやけにツンツンしてんなぁ……。

意味分かんねえ。



「だって、鬼島くんは久米夢実のことが好きだったんでしょ? それで記念に写真を撮った。それの何がいけないの? 流出させたのはきっとどこかのイカレハッカーじゃないの? ね?」

「ああ。萌々香さんの言う通り。俺の恋愛に口出すんじゃねえよ。バーカ」



カチン。ってヴェロニカから音がした……ような気がする。

げ。額にメッチャ血管が浮き出てるじゃん。怖ぇぇぇ。



「自由恋愛……そうね。構わない。でもね……恋愛をするなら、相手のことも思いやりなさいよ。あんたのせいで久米夢実さんは苦しんでいる。目的は移籍させるため……じゃなかったのよね? イビリ倒して、人生をメチャクチャにすることよね? 白井萌々香さん?」

「は? あんた頭いてんの? 誰がそんな性格悪いことする?」

「……まあいいわ。とにかく、鬼島さんが協力してくれないなら考えがあるの。このお店、裏カジノをしているのよね?」



は? 



なに裏カジノって。



店の裏にカジノができたんです~~~お客さん、カジノどうですか~~~?

お、いいね。ワンチャン掛けちゃおっかな~~~。

おおーこんな狭いスペースによく作ったなぁ。




って違ッ!! 絶対に意味合いが違う……違法なヤツだよね?




ヴェロニカ………そもそも……そのソースはどこからなんだよ。って、七家六歌さんからだろうな。

USBメモリ受け取っていたし。

七家さん何者なんだよ……。

なんか危ない橋を渡っていない?

俺、逮捕とかゴメンだからね?



「……だからなんだ? 証拠があるのか?」

「あるわよ。証拠。ねえ……あたし達と勝負しない? あたし達が負けたら証拠は受け渡す。もし、あなたが負けたら……自分のしたことを喋ってもらう。いい?」

「証拠……ねえ。その証拠がなんだっていうんだ? 言っておくが、今まで何人かが証拠とやらを掲げて脅迫まがいの真似をしたが……俺は逮捕されていないぞ?」

「でしょうね。鬼島恵介。ある警察組織幹部に伝手つてのある海原とつるんでいる理由はそこよね? だから勝負を持ちかけているの? お分かり?」

「なるほど……なら条件がある。ゲームは俺たちが指定する。それと、もし俺たちが勝ったら、その証拠とやらに加えて、お前——ヴェロニカを一晩自由にする。それなら勝負は受けるぞ」

「……おいッ!! なんだそれ!! 俺はそんなの認めねえぞ」

「いいわ。それでいい」



ヴェロニカを一晩?

絶対に俺は認めねえからなッ!!

シナモンちゃんもリオン姉も……なんとか言えよッッッ!!!!



あの……ヴェロニカが……美羽が……あんな男に……好きなように。

考えただけでもハラワタが煮えくり返る……。

考えただけでも震えてくる。

美羽は……美羽は俺が……守らなくちゃいけないのにッ!!!



「おい……俺を怒らせんなよ。鬼島……」

「ハルさんッ!?」

「ま、待ってハル君、あたしを信じて……そ、そんなにキレないで。ね? ここで勝負しなきゃ……ダメなのッ!! みんなを救えないのッ!!」



そんなこと言っても、負けたら終わりだろうがッ!!

クソがァァッ!!



「怖い怖い。よし、じゃあ、さっそくゲームをはじめよう。こっちは萌々香さんと俺が相手になる。そっちも二人選べ」

「……あたしとシナモンで行く。リオン姉とハル君は見ていて」

「俺はまだ……認め——」

「ハル殿。これは勝負の世界。乗ってしまったからには止めるのはご法度。ヴェロニカを信じてやってくれ」

「リオン姉……ッ!! くそッ!!」

「おいおい、店の備品蹴って壊さないでくれよ」

「ざけんなテメエッ!!」



く……リオン姉……止めんなよ……俺は今、本気で……。

こいつを殴りたい……。

振りほどいて、ごらぁぁぁッ!!



——っ!?




この腐れホストどもが離せぇぇぇぇッ!!!!

寄ってたかって俺を……3人掛かりとは卑怯だろうがぁぁッ!!

ぶち殺すぞッッッ!!!!



「君はそこで見ていて。さて、ゲームは単純。まずこのグラスを飲み干す。それからダイスを目の前のこの受け皿に投げ込む。出た目が奇数なら1ポイント。偶数なら0ポイントだ。4人で順番に振って、どちらかのチームが先に3ポイント取ったほうが勝ち。それと、自分の番になって酔いつぶれてサイコロを投げられなかった時点で負け。外野が口出すのも禁止。何があってもだ。簡単だろ?」



絶対に、ヴェロニカの不利じゃねえか。ヴェロニカは酒に弱い。

鬼島は未知数だが、萌々香の酒の強さは尋常じゃないからな……。



嫌な予感しかしねぇ……。




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