第26話 エピローグ


【神視点】


「あらら……アラン、負けちゃいましたか……ふうん……」


 神はあいかわらず、天上から高みの見物をしていた。

 しかし、それももう終わりを告げる。

 後ろから、上位神が現れて、彼女に告げた。


「まったく、お前はなにをしているんだ!」

「じょ、上位神さま……!?」


 下界と天界では時間の流れが違うので、上位神が気が付くのが遅れてしまっていたのだ。


「こんなことをして私にばれないと思っていたのは、愚かだな……」

「うああああああ」


 本来であれば、神となるときにそういった注意点を研修でおそわるのだが……。

 彼女は神を蹴落として成り代わった即席の神。

 なので、こうやって、上位神が見張っていることも知らなかったのだ。


「お前はお仕置きだ……! 死ね……!」

「わああああああああああああああああああ!!!!」


 こうして、愚かな神は死に……。

 天界では新たな神が生まれた。





【ジャスティス視点】


「あれ……? ここは……?」


 さっきまでアランと戦っていたはずが、気がついたらなにもない真っ白な空間にいた。

 どういうことだ……?


「おい、お前よ」

「な……!?」


 目の前に現れたのは、あきらかに女神っぽい人だった。

 まさか、こいつが俺をこの異世界に転生させたやつか……!?


「それは違う」

「心を……!?」


 俺はそのあと、天界でなにがあったのかを全部そいつに聴いた。


「なるほど……そんなことがあったのか……なんだか神ってのも大変だなぁ」

「お前にかけたすべての迷惑、この私が上位神としてあやまろう」

「それはどうも……」

「お詫びと言ってはなんだが、お前をもとの世界に戻してやろう」

「元の世界……? って、日本か……?」


 うーん、でも、俺としてはせっかく異世界に来たのだから、別にどっちでもいんだけどね。

 日本での俺はただの社畜だし……。

 あれ以上生きていてもいいことなんてないしなぁ……。


「まあそう言うな。これは決まりでな。もうあのアランのいた世界は壊れてしまった。本来存在しない遺物であるお前には、なんとしても日本に戻ってもらわねばならんのだ」

「なんかよくわからないけど……そういうことなら仕方がないな……」

「すまないな。お前には迷惑をかける」


 なんだか異世界でのことが全部無駄になるのは残念だ。

 まあ、長い夢でも見ていたと思えばいいか……。



 気が付くと、俺はあの本屋にいた。

 俺が異世界に転生する前にいた、あの本屋だ。


「あの……お客様……?」

「あ、はい……!」


 そういえば、俺はレジに並んでたんだっけ……。

 そのときに気を失って……。

 俺の手には、追放勇者が握られていた。

 まあ、せっかくだからこれ買って帰るか……。


 なんだか狐にだまされたような気分だ。

 俺はレジに本を持っていく。

 店員さんは見とれるくらいカワイイ女性だった。

 たぶん、大学生くらいだろう。

 地味目の恰好をしているが、めっちゃかわいい。


 はぁ……これが異世界ならなぁ……。

 俺も、彼女に声をかけたりできたんだろうが……。

 なんせ、現実に戻ると俺はこのとおり、さえないサラリーマンだ。


「あの……この本、私も好きです」

「え……? そ、そうなんですか……」

「けっこう売れているので、おすすめですよ」


 びっくりした。

 まさかむこうから話しかけられるとは……。

 まあ、でも……店員としてのトークなんだろうな……。

 店員さんは、なにごともなかったように本を袋に詰め始める。


 せっかくカワイイ子と話せたのに、もう二度とあうこともないんだろうな……。

 くそ……。

 異世界なら……俺は主人公だったのに……。


 いや、なにをいってるんだ俺は。

 異世界でも、主人公はアランだったじゃないか!

 それを俺は、自分で主人公になったんだ!

 現実世界でもいっしょだ。

 主人公になるには、自分で行動するしかない。

 俺を主人公にできるのは、他でもない……俺だけなんだ……!


 俺は、勇気を出して行動した。


「あ、あの……っ!」

「はい……?」



「よ、よかったら……その……連絡先交換してくれませんか……!?」





――Fin.



=============

【あとがき】

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『追放もの』の悪役勇者に転生したんだけど、パーティの荷物持ちが雑魚すぎるから追放したい。《ざまぁフラグ》は勘違いした【主人公補正】で無自覚回避します。 月ノみんと@成長革命2巻発売 @MintoTsukino

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