After Days.その後の3人

 怒涛の1週間が過ぎ。


 薫は元通りの生活と、遥という大切な彼女を手に入れた。


 聡はと言うと、しばらく姿を見なかったものの、いつの間にか戻ってきて薫が元に戻れたことを喜び、遥とのことを祝福してくれた。


 薫はなんだか聡に申し訳ない気持ちはあるものの、元通りに接してくれることがとても嬉しかった。


 けれど。遥は知っている。あの告白の時の聡の本心を。


 直接聞いたわけじゃない。けれど、聡がカオリに寄せる想いに気づかないほど遥は鈍感ではない。


 しかし、だからこそ。


 あの後薫に本心を告げなければならないと強く決意した。


 そうしなければ、聡の想いがあまりにも報われないじゃないか――!!


 結局の所、聡の薫を思う気持ちには負けたのかもしれない。けれど、聡がカオリを想う気持ちには、勝てなくとも負けるつもりはない。


 薫を、愛してる。


 それが今の遥の全てなのだから。


 ◇◇◇◇


 「そういえば、結局誰が呪いをかけたか突き止めたりしなくてよかったのか?」


 聡がずっと気になっていた質問を薫にぶつける。


「最初は少し気になったけど、今となってはどうでもいいかな。最終的に大好きな彼女もできたしな。」


 薫はその辺りあまり気にしていないようだ。気にしても仕方ない、というのもあるのかもしれないが。


「全くお熱いねえ、俺もお守り買っときゃ良かったかなあ。」


 冗談とも本気ともつかない聡の発言に、一同皆笑った。


 ◇◇◇◇


 薫は元に戻れた安堵とともに穏やかな幸せを噛み締めている。


 しかし、思い返してみれば女の自分も意外と嫌いでなかった自分に驚いている。


 もとに戻れた、という前提ありきとはいえ、女子でなくなったことに少し寂しさも感じているのだ。


 もちろんまた女になりたいか、と問われれば明確にノーではあるのだけれども。


 恋愛成就のお守りをそっと撫でてみる。

 チリン、とお守りについた鈴が小さくかわいい音を立てた。


 薫に戻るための願掛けだったそれは、今、カオリの墓標でもあった。


「忘れないよ」


 そっとつぶやくと、薫は大切にピンク色の墓標をしまうのだった。


 ◇◇◇◇


 こうして、元凶こそ分からなかったものの、薫の変身騒動は幕を閉じた。


 この先の未来がどうなっていくのか、本当に誓いは果たされるのか――それは誰にも分からない。


 けれど、きっと彼らなら大丈夫。

 根拠はない。

 しかし、きっとここまで見守ってくれた君なら彼らの行く末を信じてくれるだろう。


 かけがえのない今の積み重ねで未来はつくられていくのだから。


 ~完~

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