第14話 受付嬢フローラの報告

私はフローラと申します。

冒険者ギルドで受付嬢をしている、28歳既婚者でございます。

本日もいつも通りに冒険者の方達の依頼を捌いておりました。

すると、ギルドの扉が開き子供が入ってきたのです。見たことの無い子供でした、一瞬依頼かとも思いましたが歩き方や雰囲気から察するに先ず間違いなく新規冒険者登録でしょう。この道10年の私の勘がそう言っております。


「すみません」

「はい、冒険者ギルドファルト支部へようこそ。冒険者登録でしょうか?」

「はい。登録をお願いします」

「ではこちらの用紙に……えっと、字の読み書きは出来ますか?」

「大丈夫です」


ほら、やっぱりですね。

字の読み書きは出来るとのことですので、もしかしたらそれなりの教育を受けたのかも知れませんね。

あら、出来たようですどれどれ…

子供だと思ってましたが10歳ですか。ファルト南部の村というと…あの辺りですかね。そこから冒険者になりに出てきたということですか。やはり男の子ですから冒険に憧れるのでしょう。


一応聞いてみましたが紹介状などは無いようですね。となると、冒険者としてやっていけるだけの力を見せて頂かないと。

確か、今日は珍しくガイアスさんがいらっしゃった筈。


試験を受けていただくことを伝えると、大きな声でお礼を言われてしまいました。突然だったのでビックリしました。なんなのかしらこの子…


ガイアスさんを連れてくると、どうやら顔見知りのようです。

今ギルドでも1、2を争う冒険者パーティのガイアスさんを知っているなんて、どういう経緯なのかしら。

知り合いであるならば試験はしないでも構わないのではないでしょうか。

その旨お伝えしましたが、試験は行うようですね。では、訓練場で行いましょう。


「ではザク様はこれからガイアスさんを魔物だと思って闘って貰います」

「はい」

「ガイアスさん、貴方でしたら問題ないでしょうがコレはあくまで新人の力を見るための試験です。多少の怪我は仕方ないにしてもくれぐれも大怪我なきようお願いします」

「…わかっている」


ガイアスさんは常識人ですから大丈夫でしょうが、貴方のパーティリーダーの方はその辺りの機微に疎い方ですので、一応注意はさせて頂きました。


新人の子、ザク様(まだ正式に冒険者ではないので様付けなのです)は素手を得意とする方のようです。

殆どの冒険者は武器をお使いになりますので、コレは珍しい事です。訓練をしていた冒険者からもそのような言葉が飛んでおります。

まぁ、コレは訓練ですので冒険者になってから武器を持っても良いでしょう。


「こほん、では始めてください」


その途端、ザク様がその場で崩れ落ちました。いえ、崩れ落ちたように見えたのです。

あっ!と思った時にはザク様はガイアスさんの盾の前におりました。

対峙した時は10歩程距離があった筈です、それが気付いたら距離が無くなっておりました。

これは、もしかしたら瞬間移動の異能なのでしょうか。


これだけでも私は開いた口が塞がりませんでした。いえ、実際にはそのような間抜けな顔はしておりませんが、心の中ではそのような感じでした。


しかし、本当に驚くのはここからでございました。

ドン!と大きな音の後、バチン!とガイアスさんの腕が跳ね上がったのです。

その後にドスンとザク様のキックがガイアスさんを数歩吹き飛ばしたのです。

…表現は稚拙で申し訳ありませんが私にはそのような感じでございました。


その後攻防か続きましたがガイアスさんの攻撃は当たらず、ザク様の激しい回転技でなんとガイアスさんが膝を地面におつきになったのです。

新人が2級冒険者をダウンさせるなど普通なら有り得ない事でございます。しかも素手で。


最後にザク様が放った見たこともない投げ技。

アレに私はすっかり魅了されてしまい、思わず大声を出してしまうところでございました。


結局、そこでガイアスさんは合格であると言うことをお決めになり、ザク様と一言二言交わし2人で何処かに行ってしまわれました。






---


「以上が本日の出来事でございますギルド長」

「とんでもない新人じゃな、活躍が期待できそうじゃの。ところでな…その…」

「何でございましょう」

「…いや、何でもないわい業務に戻ってよいぞ」



最初の自己紹介とか、何で言ったんじゃ?

そう思ったギルド長だった。

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