第13話 vsガイアス『プロレスはお好きですか?』

試験管はガイアスかぁ。

5年前の記憶にあるガイアスよりも、大きくなっている。こいつも巨人種か?悔しい。

しかし、それ以上に


「老けた?ガイアス」

「…お前は大きくなったな」

「あの…お知り合いですか?ガイアスさん」


受付嬢が驚いたように尋ねる。


「…5年程前に知り合った」

「そうですか…どうしましょう?ガイアスさんの推薦であれば試験は要らないと思いますが」


えー、せっかく強そうなガイアスと試験とはいえ手合わせ出来る機会なんだ。逃すのは勿体無いなぁ。

でも、ガイアスは子供相手に試験すんのとか苦手そうだし5年前ゴブリンを斃した俺の力を知ってるだろうし無理かなぁ。


「…いや、試験はしよう」

「お?」

「今のザクの力を見たい…」


なるほど、ご興味がお有りですか。

なら期待に応えて魅せようじゃないの。


「わかりました。では御二方こちらへ」


受付嬢に案内されたのは地下にある訓練用の広場だった。

ほおーこんな風になってんのか。体育館2、3個位の広さだな。何人か訓練してる冒険者がいるな。

降りてきたガイアスを見ると訓練の手を止めてこちらを見る。


「お?ガイアスだ。ん?なんだあの子供」

「新人かな?ひょっとしてこれから試験か」

「ガイアスさんの手解きは羨ましいねぇ、面白そうだ見てみようぜ」


そうして、計らずとも広い空間が出来上がる。訓練していた冒険者はそのままギャラリーと化した。


「ではザク様はこれからガイアスさんを魔物だと思って闘って貰います」

「はい」

「ガイアスさん、貴方でしたら問題ないでしょうがコレはあくまで新人の力を見るための試験です。多少の怪我は仕方ないにしてもくれぐれも大怪我なきようお願いします」

「…わかっている」


5年前は金属の鎧を着込んでいたが、今は簡易的な皮の胸当てと訓練用の木製の剣と盾か。左手に剣…ガイアスは左利きか。

どうすりゃ合格なのか知らないが、まぁやってみるか。


「あの…ザク様、武器などは如何しますか?」

「あ、武器は無いです。体術専門なんで」


使えないわけじゃ無いんだが、どうしても趣味に合わないんだよなぁ。武具の性能の差で勝敗が分かれたり、じゃあ最強なのは俺じゃ無くて武器なのかよ。って。


「ぶはっ! 新人は無手かよ、冒険者じゃなく闘技場いけよ」

「おーい、坊主。素手じゃ何も出来ねーぞ。武器使え武器」


ギャラリーから野次が飛ぶが、見てろよ度肝抜いてやる。


「こほん、では始めてください」


先ずは小手調べだ。

その場で崩れ落ちるような動きから、直接的な動きに変化させる縮地。

ガイアスは一瞬反応が遅れるが盾を前に突き出して反応。まだ見えてるようだな。


突き出された盾に軽く右拳を添えて、大きく右足で地面を踏み付ける震脚。

急停止によるエネルギーを右拳に伝え、少し上に跳ね上げる。

俺の体重プラス縮地の疾さを全て喰らったガイアスの盾は大きく弾かれ、まるで片手で万歳をしている格好になる。

空いた脇腹にしなるような右ミドルキックを放つ。

防御の間に合わないガイアスはモロに喰らって、数歩たたらを踏む。


「まだまだ」


そのまま追撃に移行する俺に、カウンターのように片手剣を振り下ろされる。

が、読み通り。

スルッと身体ごと左に時間移動し、ガイアスの両足を狩るように水面蹴り。

蹴った瞬間、まるで根を張った大木のように動かない。


(固い…動かない)


振り下ろした剣を横薙ぎにしてきたので、飛び退き距離を取る。


「やるね、流石高名な天昇の道のメンバー」

「……知っているのか?」

「いや、人から聞いただけだよっと!」


離れて見合っても仕方ない。そもそもこっちは挑戦者の立場だ。攻めあるのみ!


再度突撃すると、また盾が突き出される。

突進にはシールドバッシュするのが癖になってるのかね。

今度は左で盾に軽く触れ、震脚。

すると今度はやや斜めに盾を傾けて体重を乗せてきた。

残念だが、それも読みの範疇よ。


今度は盾に添えた左拳を、乗せられた体重に逆らわず引き、空いた右手で盾を持つ腕を掴む。

足運びで右側に移動し、完全に側面を取る。

そのまま掴んだ腕を振り回すように放る投げ。

しかし、それは跳ねるようなステップで対応されるが、側面の位置取りはそのままだ。


「シッ!」


息を吐き、右ミドル。その足を掴むガイアス。

ココだ!


打ち込んだ右脚をガイアスの脇を土台にして引っ掛け、跳び上がるように身体を回転。

後回し蹴りをガイアスの側頭部に打ち込む。


「まだまだぁ!」


側頭部への蹴りで捕まれた右脚が解放され、回転の流れを止めずに今度は右膝で更に側頭部への追撃をする。


【蹴撃法 螺旋蹴り】


流石に頭への2連撃を喰らったガイアスは膝をつく。が、首を回しながらスッと立ち上がった。


「タフだなぁ、効いてないの?」

「……いや、効いている」


良い手応えだったんだが、何事も無く立たれたな。

成長したから比例して打撃系の威力は上がっているはずなんだが。


「うおお!? なんだそりゃ!?」

「今の見えたかオイ!?」

「ガイアスが膝つくなんて、久しぶりに見たぜ!」


ギャラリーは大沸きだな。

じゃあココらで魅せないとな!


今度はゆっくり歩きながら向かい、相手の出方を待つ。

ガイアスも慎重になっているのか、盾を構えながら摺り足で近付いてくる。

お互い手を伸ばせば触れる距離。


「おおお!」


先に我慢が出来なくなったのはガイアスの方。

剣を斜めに袈裟斬り。

振り下ろされる手首を掴み、振り下ろしの力を利用してしたに引き下ろす。

体制を崩され前のめりになり、ちょうど俺の肩口位にガイアスの頭が降りてきた。

右腕で上から抱え込むように頭をロック、剣を持つ腕も手首を掴んだまま腰の後ろに持っていく。


「っしゃあ!!」


そのまま思い切り後ろにブリッジしてのスープレックス。

コレが、魔神風車固めだ!ありがとうSSマシン!

3カウントは無いので投げた後のホールドはしない。


「「おおおおおお!!!」」


ぶっちゃけ、派手だけどダメージそんな無いのよね。後頭部打たないように頭抱え込んでるから。

だけど、盛り上がるだろう?



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