第12話 ギルドでの再会

「ははは、人類最強か! 良いじゃないか応援するぞ。子供の内は夢はでっかくないとな」


ま、そういう反応だわな。

この位の年齢はみんなそういう夢を見るもんだろう。ただ、本気で目指すか夢で終わるかの違いだ。


「んで、ザクの坊主は冒険者になりに行くのか」

「ああ、そうだよ。5年前に知り合った冒険者にまずは会いに行こうと思う。まだ居るかはわからんけど」

「へぇ、俺も街に店があってよ、冒険者は結構来るんだ。ちなみになんて冒険者だ?」

「エイトって赤い髪の男と、サシャって金髪の女の人、あとガイアスって寡黙な人」


そう言った途端、ヨウニのオッサンは目を見開いた。


「おま…そりゃ【天昇の道】か!?」

「何それ?」


天に昇る道って意味かね。随分仰々しいな。


「その3人の名前は天昇の道の奴らの名前だ。ファルトの街では1、2を争う凄腕の冒険者パーティだぞ? 他の天昇のメンバーは知らないのか!?」

「会ったのも5年前だしなぁ…その時は3人だったけど。そもそも、俺の事覚えてるかどうか分からんし」

「はぁー、本当だとしたら凄い知り合いがいるんだなぁ坊主は」


その後、ヨウニのオッサンから街の事を色々聞き、街道途中の休憩広場で野宿。

次の日の朝には街の入り口に到着した。


「じゃあ、ザク坊。人類最強になったら俺の店を贔屓してくれよな?」


そう笑いながらオッサンとはお別れした。

冗談だと思ってるようだが、良いだろう贔屓してやろうじゃないか。


まずは、冒険者のギルドへ向かおう。



村と比べるのは失礼だろうが、街は村より何倍も広く大通りは出店やらなんやらで賑わっている。


「随分栄えてるなぁ、デケェ街だし迷子になりそ…」


それっぽい建物を探して歩いていると、盾と剣が交わった大きな看板の建物が見えた。

 

(アレなんかそれっぽいな、武器屋だったとしても聞けばわかるだろ) 


木製のドアを開けて建物の中に入ると、正面にカウンター、左手に待ち合わせスペースのような空間があり、そこには明らかにカタギでは無さそうな奴らがタムロしていた。


(ビンゴ! ココで合ってるだろ流石に)


正面のカウンターにいる女性に話しかける。


「すみません」

「はい、冒険者ギルドファルト支部へようこそ。冒険者登録でしょうか?」

「はい。登録をお願いします」

「ではこちらの用紙に……えっと、字の読み書きは出来ますか?」

「大丈夫です」


勉強しといて良かったわ。識字率はあまり高くなくて村の大人でも読み書き出来ない人は大勢いた。

母が読み書き出来たので習っておいて助かった、ありがとう母上。この御恩は一生忘れません。


(んで、この用紙だけど。なになに…)


・登録は無償

・ギルドカードが身分証になるので紛失厳禁

・自動的に5級として登録される。

・3級以下は毎月最低でも1回以上の依頼をこなさなければならない

・緊急招集には全等級必ず応えること。遠方で間に合わない場合はその限りではない。

・冒険者同士のトラブルに関してはギルドは基本的に関与しない。ただし、状況によってはその限りではない。

・上記以外でもギルドの信用を著しく損なう行動をとる冒険者にはに従わない場合は罰則が発生する事がある。


だいたい、要約するとこんなところか。

まぁ想定の範囲内だな。

必要事項に記入してっと…


「出来ました」

「はい、お預かりします。ザクルードさんですね。年齢は10歳…随分若いですが、紹介状とかありますか」


んん? 紹介状? 10歳から登録できるんじゃなかったっけ?


「紹介状は無いんですが、10歳から登録出来るんじゃ?」

「ええ、可能ではあるのですが…街の外での依頼もあるため自衛能力を見させて頂く必要がございます」


おー、はいはい。そういうアレね。

試験管がアレだろ? 「コイツは天才だ」みたいになって一気に上位等級に認定されちゃうみたいな奴だろ。オーケーオーケー受けようその試験。


「ありがとうございます!」

「えっ!? (なんなのかしら…この子)では、少々お待ち下さい」


ありがとうございますは無かったな。

なんなのこの子…みたいな目をしていたな、ある業界ではご褒美なんだろうが俺はそんな趣味は無い。


数分後少し浮かれ気味で待っていた俺に声がかけられる。


「ザクルード様、お待たせしました」

「…ザク…か?」






ガイアスだった。





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