第27話 水問題
棚ショックほどの衝撃はなく、ゴミ騒動ほどの混乱もなく、ジワジワと漂った問題がもうひとつ。
ある夜、寝室の横にある洗面台の水栓で手を洗った。寝ようとすると、なんだか臭う。何かがクサい、と思ったら自分の手だった。埃くさいようなにおい。手を拭いたタオルが臭うのかと思い洗濯籠に入れた。
ある朝、お店の水栓で手を洗った後に、また手が臭った。手を拭いたのはペーパータオルだった。
水道水が臭っていることに気がついた。
ずっと1日中、毎回臭うわけではないが、朝イチだけとか夜だけとかってこともない。
新しい家でこんなのって変じゃない?と思い始めた。水道水は好んで飲まないけれど、今まで暮らしたどの家でも、洗った手が臭うほどクサかったことは一度もない。
ハウスメーカーに相談すると、見に来たアフターケアの担当者は、臭わないと言い、我々がニオイに敏感なせいではないかという態度。
確かに、わたしは、少しニオイには敏感なところがある。しかし、夫はどちらかというとニオイには普通…というか鈍感なほうである。わたしが、なんか臭わない?と10回言う内9回は、わからないというくらい。その夫も今回は、臭っている。
市の水道局、ハウスメーカーに何度か相談し、やっと水道水の水質検査をしてもらうこととなった。水道局などのアドバイスで、ご近所で同じことが起きていないかも確認した。我が家だけのよう。ハウスメーカーから、市内の検査センターに依頼して、水道局の協力の元、家の水栓の水と水道管の本管からの分岐部分の水の水質を検査してもらうことになった。
検査のための採取時、検査センターの方も、臭いますねと言っていた。立ち会っているハウスメーカーのアフターケアのおじさまは、相変わらず、ニオイはわからないとのこと。色んな意味でおじさま大丈夫なのか?と心配になる。
水道管の本管からの分岐点の水は問題がなかったため、そこから先の問題ということがわかった。家の中の何箇所かある水栓のうち、2箇所が特に臭うのだか、その2箇所から細菌の値が高く出たとのこと。ただ、その日の使い始めとかに細菌が多く出ることは多々あるそうで、最初の水は使わずに流して使うしかないらしい。でも、我が家のニオイは、朝イチだけでもなく、1日のうちで数時間使わないだけでも臭うことがある。今までの家では、数日間家をあけて帰ってきたって、水がクサいと思ったことはなかった。そうなると、家の構造が問題なのかと思ってしまう。
結局、明らかな原因はわからないのだけど、臭う水栓と、水栓の菌の多さが一致しているので、おそらくそれが関係しているのだろう。なんで新品の水栓がそんなことになっているのか、その原因はわからない。そんな中、ハウスメーカーのアフターケア担当のおじさまの言葉に耳を疑った。断熱性が良く暖かい家であるというのも、菌が繁殖しやすい原因かもしれないと真面目な顔で言うのだ。
あなたの会社の家は、暖かい家をすごく売りにしてますよね?!それのおかげで水質悪くなっちゃうの?それをしょうがないですよね…で済まそうとしてるの?!
いやいや、本当に驚くばかり。最大の売りポイントを、ここで最悪な事態の原因にしちゃうとは、ビックリです。コントか?
なんだか納得がいかない。2箇所だけ臭うのも、その2個とも使う頻度が低いわけでないのも説明はつかないし、そこだけ特別暖かいわけでもない。何よりそれを調べるのに結局何ヶ月もかかって、その間、そのまま水を使い続けなきゃならなかったのってどうなんだろうと思う。のらりくらりな担当者でなく、夫がハウスメーカーの相談窓口に現況を相談した。するとすぐに、問題の2箇所の水栓を新しいものに交換してくれた。そして、外した水栓を検査センターで分解して検査してくれたのだけど、一般よりもかなり細菌汚染があったとのこと。ニオイ自体が細菌のせいかどうかはわからないとのことだけど…。なんだか本当にげんなりする。交換してから、1箇所は、ほぼ臭わなくなり、もう1箇所も手がクサくなるほどのことはなくなった。でもなんとなく我が家は水道水は飲用にも料理にも極力使わないようになった。
なんだったのか、結局原因究明は、されないまま…高機能のあったかい家は細菌が増えやすいという救いのない解決をしたハウスメーカーの担当者に、芸能人でもないのに、壮大なドッキリではないのかと思ったが、おじさまは、一貫して真面目顔である。本当にそんなのが原因なら、家の品質として問題ありなので会社として調べ直したほうがいいですよ。素人なのでよくわからないけど、施工に問題でもあったのかと思ってしまうが、そこは問題ないと言いきるので、そうですかと言うしかない。
夫は、日本は水道水に安心しすぎているからね、とグローバル目線で納得しようとしている。それを聞き、ナマケモノは眉間にシワを寄せつつも、前ほどは気にならなくなったので、よしとするしかないかと、不満を飲み込んだ。水道水は飲めないけど。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます