第24話 住めば都

 仕事の忙しさのおかげで、棚崩壊事件の怒りが少しずつ紛れていく。しかし、棚ショックの後遺症で、不信感と共に家の至るところを見て生活してしまう。すると、微妙に不都合なところが自然と目についてしまう。

 散々打ち合わせをして建てた家でも、いざ住んでみると…というのはよく聞く。我が家は、間取りや大きな造りには不満はほぼない。ただ、細かく打ち合わせた部分以外の、ハウスメーカーさん判断のような部分で、なぜ??と思うイマイチな部分がある。

 言い出したらキリがないのだが、あの崩壊した書斎の棚やカウンターの付け方もそうだし、リビングテーブルの高さにコンセントをとお願いしたらテーブルより20センチほど高かったりとか。住居のキッチンの換気扇の排気口が、お店の出入口と同じ面にあるため、開店中に、住居のキッチンで料理するのは気を使うとか。紅茶屋さんなのに麻婆豆腐のにおいが…とか微妙だし。店舗と住居を隔てるドアの付近に、住居側の電気のスイッチがなくて、店から家に戻る時は暗闇を歩いて電気を付けたり、お店に行くときは少し戻って電気を消したりと、元々狭いので距離は僅かなんだけど、少しだけ不便だったりする。あとは、リビングのランボックスが無駄にデカイ…とか。ぜったいダメじゃないけど、もうちょっと…ってところがある。

 新しい家でそんなことばかり思いたくなかった…と、どんよりした気分に沈み込みそうになるナマケモノ。一方で、夫と娘は、そんなことばかり考えてもしょーがないじゃん、楽しいこと考えようよーといった感じ。そのとおりなんですけどね、建つ前から問題続きだったせいか、そう思いきれないナマケモノでした。

 

 それでも、お家で過ごす時間が増え、ナマケモノらしく、家中をうろうろしたりゴロゴロころがってみたりしながら、よくよく考えてみれば、今まで住んできた色んな一軒家や、どんなアパートよりも快適である。たまに帰る実家よりも住みやすい。それに、よく考えられているなぁとか上手く作ってくれたなぁと思うところもたくさんある。

 最初、リビングの広さに対して玄関スペースが広すぎないか?と思っていたが、暮らしてみると、リビングでなく玄関スペースに置きたいモノって意外とある。お店とくっついている関係で勝手口がないのもあって、玄関の靴箱横の半収納スペースが非常に役立っている。ナマケモノが分別地獄と呼ぶ厳しいゴミ分別ルールがあるこの辺りでは、キッチン付近だけにはゴミボックスの全ては収まらない。さらに、外から帰って、リビングに入る前に、上着を脱いだり消毒したりなんだり、この広さがあってよかった。

 全てお任せだった換気システムの吸排気口の位置も、とてもよく考えられてるし、こうした方が…とか、やめた方が…とアドバイスいただいた部分は、住んでみて確かにと思うところが多かった。

 色んな問題や不信感を乗り越えて、これからこの家をもっとずっと好きになっていこうと思い始めた。

 そういえば、ゴミで思い出した。以前に少し書いたゴミ集積所の問題について。これも、なかなかな拗れ案件だった。

 

 

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