第23話 不信感満タン

 朝になって、驚く娘に棚崩壊を説明しながらナマケモノが怒り狂う中、夫は静かに、ハウスメーカーの担当者と現場監督に電話をしていた。

 できる担当者Kさんは、真っ先に、怪我はなかったですか?と聞いてくれたそう。抜かりないです。なのに家は抜かりだらけ…と毒づくナマケモノ。

 本当に、崩れたのが、棚の下のカウンター机に誰もいない時でよかった。わたしと娘が並んで勉強したりできるように作っていたので、本当に、娘が宿題なんかやってる時に、棚が崩れ落ちていたら怪我をしていたかもしれない。そう思うと余計に腹が立ってきた。

 現場監督は、施工した大工さんと共にすぐに状態を見に来たのです。ナマケモノは、ナマケモノらしからぬ働き様なので、家のことは夫に任せ出勤した。仕事から帰り、どうだった?と尋ねると、驚きの事実が発覚した。

 現場監督が、どこかに電話しに離れた時に、施工した大工さんが夫に必死の訴えをしてきたそうです。それによると、大工さんは、その棚をつける時に、付け方について現場監督と話したようで、こんなつけ方じゃ軽い飾りものくらいしか置けないけどいいの?と確認したとのこと。監督はそれでいいと言ったそうです。

 我が家に来てから、現場監督が、全て私の責任です申し訳ないと、しきりに謝っていたと夫から聞いたが、それでも、わたしの怒りは収まりません。

 だって、打ち合わせで、本や書類がおける、しっかりした棚をと伝えていたし、我が家の場合、怒涛の打ち合わせし直しで、営業担当者と現場監督と同席で打ち合わせをしているので、確実に現場監督にも伝わっているはずなのです。さらに、完成した家を、現場監督に案内されながら説明を受けている時にしっかり確認しているのです。棚板は分厚くてしっかりしてそうだが、棚板と壁の接続部分があまりにスッキリ見えたので、コレ、強度は大丈夫ですか?A4の書類や本を端から端までつめても?としつこいナマケモノは重ねて確認したのです。明るく快活な現場監督は、大丈夫です!と笑顔で言い切ったのをわたしは覚えている。その笑顔を思い出し、また腹が立つ!どういうつもりなのか、さっぱりわからない。

 直接話した夫はなぜか、まぁずっと謝ってくれてるし、すぐやり直してくれるみたいだし、となんだか、しょうがないよねーという感じ。えええ?ナマケモノのくせに解せないことはいつまでも消化できないわたしは、しょうがないかーとはならない。理由が聞きたい、なぜこうなった?大丈夫ってどんなつもりで言ってたの?

 悪気はないんだしと夫は言うが、悪気があるとしか思えないんですけどぉ。

 引き渡し後に発覚するちょっとしたミスには、ミスはしょうがない直してもらえればそれでよしとわたしは思った。でも、これってミスですかぁ?大工さんは気づいていたんでしょぉ?

 温度差を感じる中、早々に棚は作り直された。こうなると、書斎のカウンターデスクも心配になり、そこも補強をしてもらった。わたしの仕事中に全て済んだので、現場監督には会えないまま。担当者からも現場監督からもとくに説明はない。夫にはあったのかもしれないが、わたしには届いていない。夫は直ったからもういいんじゃない?と言う。どうしても解せなくて、しばらくプリプリ怒っていた。

 同じ棚板を使い、付け方を変えただけで、全く同じ量のモノを詰め込んでも、その後崩壊は起きていないし、たわんだり傾いたり不穏な兆しも見られない。補強の資材とかがめっちゃついてるとかってこともなく見た目もそんなに変わっていない。

 それにしても、夫はなんでこんなにあっさり、なかったことにしてるんだ?

 ナマケモノも少し冷静になって考えてみる。直接会ってずっと謝る現場監督に同情したのか?わたしの荷物が多すぎることに常々呆れているので、それも棚崩壊の一因と考えているのか?どちらもあり得る。荷物の多さに関しては、わたしは、ちゃんと詰め込む荷物の種類を全て伝えたうえで頑丈にってお願いした。なのに頑丈のがの字もない飾り棚ぐらいの付け方だったんでしょ?だとしたらやはり納得がいかない。ただ、大工さんの言うことが全てかと言ったらそうではないかもしれない。早々に直してもらえたからいいかと無理矢理思ってみる。

 打ち合わせ段階でいろいろあったけど家自体の品質はいいよねと思って暮らしていたのに。この一件ですっかりその思いは砕かれ、ナマケモノは不信感でいっぱいになったのです。不な想像が膨らみ、あそこもここも大丈夫かしら!と家中不安だらけ。こんな家にいくら払ったと思ってんだ!と余計な怒りまで湧いてくるのでした。まだ払ってないんですけどね…でもローン組んでこれから払っていくのですよ何年も。

 この棚崩壊事件は、いつまでたっても、思い出すとクムムムムと思うのですが、我が家の窓口である夫が、済みの烙印を押しているので、仕方がない。誰にでもなんでも言える夫が、もう言わないと決めたのには何か理由があるのだろう。それを理由としてナマケモノも忘れることとする。

 

 一大決心の大きな買い物。なんだかんだいい買い物したって思いたい。

 しかし、そう思えるまでには、まだまだ時間がかかるのでした。

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