ドリンクバー

 英太はお腹の底から深呼吸して、天井を仰いだ。

「喉乾いた。俺も、コーラ飲む」

英太のコップは、空だった。俺のコップにはまだ、カラメル色の液体が入っている。

 英太は、俺のだけでいいな、と断りを入れて再び席を立った。

「……稜、話の意図が理解出来ないのは、僕だけかな」

「大丈夫、俺も全くだから」

「よかった」

零が分からないとは。英太は一体何が言いたいのだろうか。サンタクロースを信じているのではなかったのか。

 

 すっかり暗くなった、と言っても、ライトアップされた木々たちのおかげで暗闇ではない外は、年に一度の高揚を楽しもうと、多くの人が行き交っていた。

 店の中にも、家族連れや恋人たちが、心なしか増えた気がする。

 みんな暖かい笑みを浮かべている。

 俺たちも、そう見えていたら良いのだけれど。


「お待たせ。あと少し、聞いてくれ」

英太は右手にガラスコップ、左手に白い陶器のコップを持っていた。

「これ? 日替わりスープ。美味しいぞ」

俺たちの視線に気がついた英太は、左手をあげて言った。

「後でおなか壊しても、僕は知らないよ」

まかしとけ、と英太は胸を張った。

 二つのコップを机の上に並べて、英太は再び口を開いた。

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