第15話 冬至
スーパーでかぼちゃと小豆がこれ見よがしに陳列されていたので購入した。料理は大嫌いだが今日ばかりは仕方ない。鍋でかぼちゃを煮てそこに小豆と醤油を加え、さらに煮込む。そうすればいとこ煮の完成だ。
「冬至はこれなんだって」
「そうなんだ」
食べてみるとかぼちゃは美味しいが小豆はよくわからない。
「微妙だね」
「そう?美味しいよ」
夫が良いなら良いやと思い、箸を進める。テレビには録画しておいたお笑い特番が流れていた。今年もあっという間に年末だ。何もしていないというのに。
風呂を沸かす。ゆずに爪楊枝で穴を開け、風呂にそれを入れる。
「お風呂沸いたよ」
「何か匂いがする」
「ゆずのせいだと思う。お風呂に入れといたよ」
「おばあちゃんが生きてた頃もそういうのやってた。『こういうのはちゃんとしなきゃいけない』って」
私はその言葉がすごく嬉しかった。私も季節の行事はちゃんとしなきゃと思うタイプだから。しかし多分、夫と冬至の行事をするのは初めてだ。去年はできなかったことができるようになったということなのかもしれない。私は指先に残るゆずの香りを感じながら小さく笑った。
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