9.変わるという、約束。
――連休が終わった。
ミュラー家で過ごした時間。
そして、知紘に指摘されたことは脳裏に焼き付いていた。
きっとこの問題は、ボクが今後の高校生活を過ごすうえで考えなければならない。
「あれ、これって……?」
そう考えながら、いつもの三人で登校した時のことだった。
ボクの下駄箱には可愛らしい便箋が一枚。風になびいて落ちたそれを拾い上げ、目を通すとそこに書かれていたのは――。
「杉本拓海くんへ、放課後に校舎裏で待っています――か」
「おやー? 相変わらず、モテモテですなぁ!」
「いや、別にそういうことでは……」
いわゆる、ラブレターというもの。
これで今月は四回目。
「むぅ……人気だね、杉本くん」
「おいおい、エヴィまで。そんなことないって」
――またか、と呆れていると。
少し遅れてきた彼女も、どういう状況を察したらしい。
若干だが不機嫌になって頬を膨らせ、周囲に聞こえない大きさの声で文句を言ってきた。ボクは苦笑いしつつ頬を掻く。
だが、この申し出についての返答は最初から決まっていた。
「とりあえず、ちゃんと断ってくるよ」
「え……?」
それをエヴィに伝えると、彼女はポカンとした表情で首を傾げる。
ボクは、そんな少女に詰まりながらも伝えるのだった。
「ボク、少しずつでも変われるよう頑張るから。だから、安心して」――と。
そこに込めたのは、過去の自分と向き合う気持ち。
傍からすれば意味の分からない内容だ。でも、ボクたち三人にとっては、特別な意味を持つ言葉だった。エヴィもすぐに、その意図を察したのだろう。
ハッとした表情になり、少しだけ泣きそうになって。
それでも、笑顔を浮かべて答えるのだ。
「うん……! 私も、頑張るよ!」――と。
それを聞いて、ボクも安堵した。
お互いに少しずつでもいい、変わっていこう。
そして、いつかきっと――。
◆
「まったく、手のかかる子たちですなぁ……?」
下駄箱の前で、何故か感情的になっている二人。
知紘は、少し離れた位置からそれ見て、小さく笑った。
自分にも後悔や、哀しみはある。この三人でかかわりあうようになって、自分はそういった気持ちになってばかりだった。
それでも、彼らを恨めないのは綺麗だから。
あまりにも純粋で、それでいて少し捻くれていて、とかく愛おしい。
「あー、やだやだ。花のJKなのに、おばさんみたいじゃん」
だが、そこまで考えて。
知紘もまた、前を向こうと気持ちを改めた。――その時だ。
「ん……?」
まだ人気のない生徒玄関。
そんな場所で、物陰からの視線を感じたのは。
「………………なるほど、ね」
その正体には、察しがついていた。
きっと、斉藤たちだ。彼らは拓海のことを目の敵にしている。
本当につまらない奴らだと、知紘はゲンナリとしていた。しかし、頭数が揃えば厄介なのは間違いない。
「今日の放課後は、少し荒れそうだね……」
知紘はそう呟いて、まだ向かい合ったままの友人たちに声をかけに行く。
そして、彼女の予想通りに事件は起こるのだった。
――――
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