Film 20. 『東京ゴッドファーザーズ』☆

(☆マークはクリスマス映画!⛄)


 2003年の日本アニメ映画。1時間31分(短め!)。

 クリスマスに赤ちゃんを拾った奇妙なトリオの珍道中。奇跡と運命の大盤振る舞い!!


 中年男のギン、年増オカマのハナ、家出高校生のミユキ。

 新宿の公園で肩を寄せ合って暮らす3人は、偶然出会っただけのホームレス仲間だ。クリスマスの夜、ゴミ山を漁っていた3人は、そこで赤ん坊を見つけてしまう。

 当然、警察へ届けようとするギンとミユキに対し、赤ん坊を天からの贈り物だと喜ぶハナ。勝手にキヨコと命名までしてしまい、面倒を見るのは1日だけという約束で押し切ってしまう。さらにはキヨコと一緒に見つけた写真と名刺を手掛かりに、自分たちで母親を探し出そうと言いだし……。


 若くしてこの世を去った平成の至宝、アニメ監督・こんさとしの残した傑作の一つ。クリスマスが始まりで、年越し映画でもあるこの作品をトリにチョイスしました。


 今監督は同世代の人気アニメ映画監督・新海誠監督や細田守監督ともまた違う、独特の作風と絵の雰囲気を持ちます。

 本作にも見える路地裏のリアリティーはその一つ。生活感と趣きのある「日本の年末、雪積もる都会」の風景です。他の二監督のようにヴィヴィットな絵柄でない分、目になじみやすく、観る人は老若男女を問わないのではないでしょうか。


 観る人を選ばないといえば、物語もそうです。

 上のあらすじでわかる通り、登場人物の年齢は高め。コミカルであっても擦れた人間味のあるキャラクターたちで、若者向けに理想化デフォルメされた少年少女たちを描く二監督とはここも毛色が違います。キラキラしていないし、なんとなく生臭い。

 だからこそ、キャラクターたちに下手な期待をせずに済む、とでも言いましょうか。メインの三人は基本的に行き当たりばったりで、行く先で度々喧嘩したり傷を見せ合ったりします。そのやりとりの不思議な生温かさとなつかしさ。常に等身大な彼らを人間として愛おしく思えてくるのです。


 そして、この物語からキーワードを選ぶなら、「奇跡」がその一つ。

 クリスマスの奇跡というモチーフは、なじみ深いですが、悪く言えば手垢がつきすぎていて新鮮味に欠けるでしょう。

 しかし、それが何度も起こるなら? たたみかけるように、あるいは油断できなくなるくらい立て続けに飛び出してくるとしたら?


 さすがにもうないだろう、と思ったものがまだ出てくる。そのとき、フィクションの奇跡慣れした現代人でさえ、居住まいを正し心を躍らせる。奇跡の安売りになってしまうおそれもあるのですが、そこにまた今監督の絶妙な脚本センスが光るわけです。


 とても観やすいのに奥が深すぎて1000字程度では語り尽くせません。何度観てもいいし、それこそ年一で観たいとも思える逸品。

 そもそも邦画はクリスマス作品が想像以上に少ないんですが、本作はクリスマスだけでなく年越しにもピッタリ。ケーキを食べながら観始めて、エンドロールを見ながら除夜の鐘を聞きませんか?



 さあ、今日は待ちに待ったクリスマスですね!

 We wish you a merry Christmas!! And a Happy New Year!!!

 私と映画の名作たちからあなたにメリークリスマス!! そしてよいお年を!!


 また会いましょう!

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クリスマスはおうちでキネマ!!2021 ヨドミバチ @Yodom_8

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