第12話 友達とあの子の仲が……

「そう言うわけで連絡先教えて」


「え? いや……まぁ良いけど」


 連絡先くらい教えても良いか。

 どうせ連絡なんてそう来ないだろうし。

 スマホを取り出し、俺は堅山さんと連絡先を交換する。

 数少ない女子の連絡先だ素直に嬉しいが同時になんだか刹那さも感じる。




「はぁ……」


「どうした? なんだか浮かない顔だな」


「いや、昨日いろいろあってさぁ……」


「なんだよいろいろって、昨日はそのまま帰ったんだろ?」


「いや、実はさぁ」


 翌日、俺は昨日の堅山とのことを井岡に話そうとしていた。

 しかし丁度その時本人が俺の元にやって来た。


「おはよう」


「げっ……」


「げってなによ? 私が来たら困るの?」


「い、いやそう言うわけじゃなくて……」


「普通今まで話しもしなかった奴に声かけられたら驚くだろうが、少しは考えろよ」


「お、おい井岡!」


 井岡は堅山に対して少し強めに言葉を返した。

 こいつは不良時代の名残なのか少し口調が乱暴だ。

 本人に悪気はないのだが、井岡を知らない人間からしたらあまり良い印象ではない。

 もちろんそれは堅山も一緒で……。


「別に良いでしょ? それに最近は話すようになったのよ。ね?」


「え? あ、はい……」


 なんだか最後の「ね」にすごい圧を感じた。


「ふーん……で、振られたくせに何かようか?」


「は!? う、うるさいわね! なんでアンタが知ってるのよ!」


「お前と違って俺は石嶋と友達なんだよ。いろいろ相談だって乗るさ」


 なんで友達の部分を強調したんだ井岡のやつ?

 てか、朝から喧嘩はやめてくれよ……ほら、ただでさえクラスで人気の堅山が俺みたいな一般生徒に話しかけていることで注目を集めているのに、その上喧嘩になんてなったら更に注目されちまう。


「あっそ、私ももう友達でしょ? 石嶋君」


「え? あぁ、まぁ……」


「知ってるか? 男女の友情って成立しないらしいぞ?」


 なんで今日に限ってこいつはこんなに喧嘩腰なんだよ井岡!

 頼むからさっさと要件だけ聞いて追い返そう!

 そうでないと後からカースト上位層の奴らが絡んできてうざいから!


「別に良いわよ。私の目標は石嶋の彼女になることだし」


「はぁ? まだ諦めてねぇの? お前も諦めわりぃなぁ~悪いことは言わねぇからよ、さっさと諦めて他探せよ」


「アンタには関係ないでしょ?」


 すっかりバチバチに火花を散らし合う井岡と堅山さん。

 なんでもいいけど、俺を放置しないで……。


「そ、それで何? どうかしたの?」


「う、うん……あ、あのさ……今日も一緒に帰らない? その……せっかく同じ電車通学なんだし」


「え……あぁ、それは……」


 そう言いながら俺がいつも一緒に帰る井岡に視線を移すと井岡が代わりに話し始めた。


「あぁ、無理無理。石嶋は俺と帰るから、お前はいつものお仲間同士で帰ればいいだろ?」


 あれ?

 そんなストレートに言っちゃうの?

 俺はただ井岡に「俺も一緒になるけど?」的な一言を言ってもらえればそれでよかったんだけど……。


「なんでアンタが決めるのよ! 石嶋君は私と帰りたいかもしれないでしょ!」


「いや、ねぇだろ? お前、数日前に振った相手と二人下校したいと思うか?」


 おぉ、井岡がかなり真っ当なことを言ったぞ。

 そうだよ、そう言うのもあるから俺としてはあんまり一緒には帰りたくないのが本音だ。

 ほら、だって気まずいし?

 それにカースト上位層の方々にそんな光景見られたらいろいろうざいし?

 本当はやんわり断りたかったんだけど、まぁ結果オーライか。


「確かに振られたけど、次は絶対に振られないから大丈夫よ」


 いや、どういう理屈!?

 そんで井岡の質問の答えにもなって無くない!?

 そんでなんで堅山さんはこんなどや顔出来るんだ……ちょっと頭が残念な人なのかな?


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る