第11話 彼女はヒロイン俺はモブ

 真剣な表情の彼女は素直に可愛かった。

 なんでこんな子が俺なんかを?

 いっそ付き合ってしまっても良かったのではないか?

 そんな事を考えるが直ぐに絶対に上手く行かないと自分の本能がそう訴えている気がした。

 どうせ彼女のような可愛い子なら男なんてより取り見取りだ、直ぐに俺なんか振って別な男の所に行ってしまうだろう。

 俺はそれが怖いのだ。


「お互いの事を全然知らないし……それに俺と君じゃ上手くなんていかないよ」


「なんでそんな事を決めつけるの?」


「冷静に考えてみてよ。君みたいな可愛いこと平凡な俺じゃ釣り合いが取れないだろ? それに君に言い寄る男子は多い、だから僕に対するそんな気持ちなんて直ぐに消えるよ」


「そんな事ないわよ!」


「いや、あるよ……人間ってそう言うものだから……」


 この世界は小説やアニメ、漫画のように優しくはない。

 誰もがハッピーエンドの最後を迎えられる訳ではないのだ。

 だから俺は現実的に考えて彼女を振った。

 ましてや高校生の色恋なんて言っては悪いがおままごとのようなものだ。

 心変わりなんてかなり早い。


「私は石嶋を一年間ずっと好きだったんだけど」


「そ、それはありがとう……」


 急に何を言い出すんだ……少し嬉しいがそれが本当かなんて誰にも分からない。

 

「私だって自分事を理解してないわけじゃないわ……告白だって結構されたし、言い寄って来る男子だっているから……」


「まぁ、だろうな」


「アンタの言う通りよ。人間の気持ちなんて移り変わりの早いものよ、私に告った先輩が翌週には別な女の子と付き合ってるんだから」


「そ、そんなことがあったのか?」


「まぁね。別にどうでも良いけど……でもさ、石嶋ってさ運命って信じる?」


「はい?」


 それこそ俺が絶対に信じない言葉だ。

 運命なんてものは存在しない、あるのは物語の世界だけ、それが俺の考えだ。


「私は石嶋にそれを感じたの……何となく思ったのよ、あぁ私石嶋となら一緒にずっと居られる気がするって」


「何を根拠に……お互い良く知らないのにそんなこと分かるわけないだろ?」


「上手く言えないけど、私はそう思ったのよ。他の誰でもない、石嶋となら多分この先ずっと一緒に歩いて行けるって。まぁでも……振られちゃったけどね」


「わ、悪い……」


「謝らないでよ。全部私が悪いんだから……あんなことされて気分の良い人間なんて居ないわ。最悪の状況で石嶋に告白しちゃった」


 それは確かにそうかもしれない。

 でもいかに状況が良くても俺は彼女の告白を断っていただろう。

 それだけは断言出来る。

 どんなに彼女と仲が良くても俺は彼女を振っていたと思う。


「でもさ、あんな一回の失敗で諦められると思う?」


「え?」


「私、一年もアンタを思ってたんだよ? 簡単になんて諦めないから」


「い、いやでも……」


「絶対私の事を好きにさせるから、今日はそれを言いたかったの」


「……悪いけど、多分俺が君を好きなったとしても君と付き合うことは無いと思うよ?」


「そんなこと言ってられるのも今のうちだから。今年中に石嶋を私に惚れさせるから、覚悟しておいて!」


 堅山さんはそう言いうと俺にニコッと笑顔と見せた。

 可愛い。

 ふとそんな事を自然と思ってしまうほど彼女の笑顔には魅力があった。

 別に彼女を可愛いと思わない訳ではない。

 でも彼女はこの現実世界で言うヒロイン。

 しかし俺はこの現実世界では主人公ではない、モブキャラの一人なのだ。

 ギャルゲーのヒロインがモブキャラと恋をするか?

 するわけないだろ?

 そう言うことだ。

 彼女にはきっとこれからふさわしい主人公との出会いが待っている。

 俺なんかに構っている暇はないんだ。



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