第13話 日常が壊れていく音がする...

「すげー自信だな、じゃぁやってみれば良いんじゃねぇの?」


 いや、なんでお前がそんなこと言うの?

 一番の当事者は俺なんだけど……。


「言われなくてもやるわ。という訳で今日の放課後は石嶋君を譲って」


「仕方ねぇ、今回だけはお前に譲ってやる」


 いや、だからなんでお前が決める!

 なんか井岡の奴、この状況を楽しんでないか!?


「じゃぁ、石嶋君。一緒に帰ろうね」


「え……いや、俺は一緒に帰るなんて一言も……」


「いや……なの?」


 そう言う泣きそうな顔するなよ。

 

「おい、石嶋。こんなに言ってんだ、今日くらい良いだろ?」


 なんでお前は堅山さんの味方みたいになってるんだよ!

 さっきまで俺の味方だったのに!!


「いや、別に嫌とかじゃないけど……堅山さんいつも他の友達と帰ってるから……」


「あぁ、大丈夫よ。今日は石嶋と帰るって言うから」


 やめて!

 絶対に言わないで!

 絶対にメチャクチャ面倒臭いことになるから!

 でも、言わなくても一緒に帰ってる姿を見ればバレる……はぁ、まいったなぁ。

 吉田辺りから絶対なんか言われそう。

 そんな事を考えてるうちにあっという間に放課後になった。

 堅山さんはあの後は俺に話しかけてくることは無かった。

 しかし、問題はこの放課後だ。

 何もなく帰れれば良いけど……なんて事を思いながら鞄に教科書を入れていると……。


「え? 伊奈今日もダメなのか?」


「なんか最近付き合い悪くない?」


「ごめん、今日は石嶋と帰るからさ」


「石嶋?」


「なんであいつと?」


 やめて!

 そんな目で俺を見ないで!

 俺だってなんでこんな事になったのかわからねぇんだよ!

 てか吉田に至っては睨んでるじゃん!

 あぁ、あいつらの顔見なくてもあいつらが今どんな顔してるか分かっちまう……。


「別良いでしょ? じゃぁまたね」


「あ、伊奈!」


「行こ!」


「え? あ、ちょっと!」


 俺は堅山さんに手を引かれ教室を後にした。

 明日学校に来るのが嫌になった瞬間でもあった。


「石嶋って音楽は何聞くの?」


「えっと、最近だとヒアソビとかマッチゾーンとか……」


「意外とメジャーなの聞くんだ」


「まぁ、正直世間で人気の曲くらいしか聞かないな」


「じゃぁさ、じゃぁさ! 休みの日っていつも何してるの?」


「え? まぁ井岡と買い物行ったり、ゲームしたりだな」


「ふーん、井岡君と休みの日も一緒なんだ」


「まぁ、友達だからな」


「じゃぁ、私とも買い物行ってくれるよね?」


「え? あぁ、いやそれは別の話というか……」


 下校の途中堅山さんから質問攻めにされてしまった。

 俺が答える度に堅山さんは嬉しそうに笑顔を見せたり、時折何か不満がある様子でむすっとした表情になる。

 その度に俺は何か変な事を言っただろうかと自分の発言を思い返す。


「最近暑くなったよねぇ~」


「夏も近いからな」


「男子って夏制服のパンツって暑く無いの?」


「暑いよ、出来ることなら短パンになりたい。女子はスカートだから良いよな」


「まぁ、涼しいけど冬場は寒いよ? それに気を付けないとパンツ見えるからさ」


「そ、そうか……」


 堅山さんはそう言いながら自分のスカートひらひらと振る。

 そんな彼女の姿に俺は思わずスカートからスラリと伸びる白い足を見る。


「何? スカートの中にでも興味あるのぉ~?」


「い、いや別に……」


 正直興味はかなりある。

 しかし、そんな事を言ってしまったら変態だと思われてしまう。

 ここはポーカーフェイスを決めながら「俺、そういうの興味ないですよ?」って感じのオーラを出さないと!!


「ふ~ん……見たい?」


「ふぉう!?」


 やばい、以外な質問に思わず変な声が出てしまった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る