第5話 瀕死の女性にカンチョー!
盗賊に襲われていたアリシアを助けた。彼女は無事なのだが、その傍らでは別の女性が血を流して倒れていた。
「これは……。内臓にまで傷が達しているな……」
女神様からの情報によると、この世界の医療技術は中世~近世ヨーロッパレベルだと聞いている。内臓まで達した傷を治療するのは難しい。
だが、それはあくまでも医療技術だけであればの話だ。この世界には魔力や闘気という概念がある。治療魔法だったり、ポーションだったり、闘気による自己治癒力の向上だったりで対応は可能だろう。
「カンスケ様っ! どうか、彼女を救ってください! お願いします!」
アリシアと名乗った少女が必死に懇願してくる。
「俺は治療魔法もポーションも持っていないんだ。そっちもないのか?」
「ううっ……。私にもないのです……。何か、何か方法はありませんでしょうか!?」
少女が悲痛な声を上げる。
「仕方ない。俺の奥の手を使ってやろう。誰にも言うなよ?」
俺はそう言って手を合わせ、人差し指を突き出した構えを取る。
「ま、まさかその構えは……」
少女が驚愕した表情で俺を見る。
「知っているのか? これはカン……」
「希少な治療魔法ですねっ!? ああ、こんなところで治療魔法士とお会いできるなんて! 何という奇跡なのでしょうか!」
「…………」
確かに、このカンチョーの構えは、神に祈っているように見えなくもないだろう。今にも死にそうな重傷者がいる前で、まさかカンチョーの構えを取る奴がいるなんて想像もしていないだろうし。
「えっと、これはな……」
「?」
少女が俺を期待の眼差しで見てくる。かなり説明しずらい。絶対に納得してもらえないだろ。こうなったら……。
「復活しろっ! おらああぁっ!」
ズポォオオオッ!! 俺は瀕死の重傷を負った女に、カンチョーをお見舞いしてやった。
「うぐぉおおぉおっ!?」
突然の激痛に、女が苦悶の叫びを上げた。
「な、何をなさるのですかっ!!」
アリシアが俺を非難する。
「ひ、ひどいです……。こんな、こんな最後って……」
彼女が悲壮な顔をする。傍から見れば、俺はヤバい奴である。今にも死にそうな重傷者にカンチョーをぶちかましたわけだからな。尊厳を冒涜しているように思われても仕方ない。
「違うっ!! この奥義『カンチョー』は、治療の効果があるのだっ!!」
「そ、そんなバカな話がありますか!! 回復魔法は希少だと言われているんですよ!! そんなカン……なんかで治せるはずが……」
アリシアが文句を言っている途中。パアァッ。倒れている女性の腹部が光りだしたのだった。
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お待たせいたしました。
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【カンチョースキル】で異世界無双!!! ~女神様、生意気な女騎士、ボーイッシュな冒険者仲間……。みんな、背後が隙だらけだぜ!!!~ 猪木洋平@【コミカライズ連載中】 @inoki-yohei
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