第3話 盗賊に襲われている少女と遭遇

 俺は女神様の悲鳴を聞きながら異世界へと転移した。

 そして、最初に視界に入ってきたのは……


「うわ……」


 それは見事なまでの『大草原』であった。

 広大な大地に、遠くの方には山々が見える。


「ここが……新しい世界なのか……」


 俺は感慨深く呟く。

 どうやら、俺は無事に転移できたようだ。


「さて、これからどうするか……」


 とりあえず、この世界のことを知らないといけない。

 まずはこの辺りの散策からだな。

 俺はそう思い、一歩を踏み出した。

 その時だった。


「きゃあああっ!」


 女性の叫び声が聞こえてきた。


「なんだ?」


 俺は首を傾げつつも、その女性の声のする方へと向かう。


「おらあっ! おとなしくしろっ!」


「くっ……」


 そこには、盗賊らしき男たちに囲まれた金髪の少女がいた。

 年齢は十代後半といったところか。

 美少女と言って差し支えないだろう。

 男たちの手が少女を掴む。


「離しなさいっ! 私を誰だと思っているのですかっ! こんなこと、許されませんよ!」


 少女は必死になって抵抗している。


「へっ、許されないから何だってんだ! お前みたいな生意気な女はなあ……俺らの慰み者になる運命なんだよっ!」


 リーダー格の男の言葉に、周囲の男どもは下品な笑いを浮かべる。

 その光景を見て、俺は思った。

 ああいうのは放っておいてもいいのだが…… 。


 俺は女神様に頼まれているのだ。

 この世界を救うようにと。

 具体的に何をすればいいのかは口を濁された。

 俺のカンチョースキルで責めても口を割らなかったことを考えると、重要な事項だったのだろう。


 世界を救うために、この局面で俺がするべきことは何か。

 選択肢は三つだ。

 見なかったことにして立ち去る。

 盗賊たちを殲滅し少女を助ける。

 盗賊たちの仲間になり少女の体を楽しむ。

 どれもアリだが、ここは……。


「そこまでだっ! 悪党めっ!!」


 正義のヒーローの登場である。


「なんだてめえはっ!?」


 突然現れた俺に、盗賊たちは動揺する。


「通りすがりの冒険者だ! 悪い奴らを成敗しに来たぞ! 覚悟するがいいっ!!」


 俺は高らかにそう宣言する。

 女神様の情報によれば、この世界には冒険者や魔法、魔物などが存在する。

 ごく一般的な(?)ファンタジー世界だと考えていいとのことだった。

 俺の言葉を受けて、盗賊たちは腰に差していた剣を抜いた。


「ふざけた野郎だ! ぶっ殺してやるぜっ!!」


「返り討ちにしてやる! 囲め囲めっ!」


 盗賊たちが俺の周囲に陣取る。

 女性を楽しむのは後回しにするようだ。


「お頭! あいつ、見たところ丸腰ですぜ!」


「そうみてえだな。魔力反応も闘気も大したことねえし、採取タイプの冒険者だろう。俺たちの敵じゃねえ。いけっ! 野郎ども!!」


 盗賊たちのリーダーが号令をかける。

 奴らが一斉に俺に襲い掛かってくる。

 確かに俺は武器を持っていないし、魔力や闘気についても素人だ。

 だが……

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