これで終わり、じゃなかった!


「筋肉があればビームも出せる!」


「ビームを出すな!」


 俺はジャンプしてガオンの後頭部をパーンと叩いた。


「なんかいい感じの格言っぽく言ってんじゃねえよ! なんで筋肉からビームが出るんだ!」


「このマッスルビームは、全身の筋肉に全力の圧力を与え、その肉圧を両手に一点集中して打ち出す衝撃波! そのときに分子原子が激しくぶつかり合い、強い発光と高熱を生み出す! 筋肉の究極の技である!」


「そんなんありかよ……」


 あまりのむちゃくちゃ理論に肩が落ちる。


「さすがガオン、僕たちも堪えただけあったね」

「ええ、すごかったですわ。この状況を一撃で終わらせてしまうなんて」

「すっごい! みんな倒しちゃった!」


 アラタ、シャルティ、アスカがガオンを褒めちぎる。


「ちょっと! 私のジュモックンが巻き込まれちゃったんだけど!」


 マリーロンは……めんどくさいから放っておこう。


「これで終わったか……」

「やりきったのですわね……」


 え? ちょっとまって、そのセリフは――


 ズドン!


「え、ええええええええ――」


 アラタとシャルティがフラグを立たせてしまった。


 ジャアアアアアアアアア――


「ラスボスの登場、ここにきて……」


 アラタが戦慄する。


「もうみんな、くたくたですわ」


 みんなが満身創痍の状態で、ヤマタノオロチどころじゃない、とんでもない頭の数を持った巨大な蛇が現われた。


「コイツが、邪気の発生源か!」


 唯一、無傷のガオンが構える。


「名前をつけるなら、月並みだけどエビルスネイクってところかな?」


 アラタもさすがに、腰を地面に落とした。


「筋肉の私が、倒す!」


 ガオンが大ジャンプをして、エビルスネイクに飛び掛った。

 だが、


「うわあああああああ」


 うじゃうじゃと髪の毛のような大勢の頭に、ガオンが噛み付かれた。

 飲み込むように、ガオンが蛇の頭の群れに埋もれていく。


「ガオン!」

「大丈夫だ! 私は!」


 何とかもがきながら、這い出てくるガオン!


「マモル! 今のうちに、魔石を探してくれ!」


「魔石だって!」


「そうだ! この召喚獣のどこかに! 邪気を発生させている魔石が埋め込まれているはずだ! それを探してくれ! 私が時間を稼ぐ!」


「ガオン……」


 もうくたくたの五体の召喚獣たち。


 腰に力が入らないのか、付かれきったアラタ。


 アスカ、シャルティには任せられない。


 なにより、ガオンから託された!


「分かった、ガオン!」


 どこにあるのかは分からない。だけど、探し出してみせる!


「マモル、受け取れ!」

「え?」


 アラタの声、こちらに投げつけてきたのをキャッチする。


 それは、カード型のスクロールの入ったホルダーだった。


 アラタが、親指を立てる。


「ああ、ありがとう!」


 俺はそのカードの束を持って、エビルスネイクの真下へ走った。

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