出た! 必殺の筋肉砲!


「アルフレッド! ホーリーブレス!」


 白い炎が地面にまかれた。


「アイ! ロイ! ホーリードラゴンのフォローだ!」


「ライちゃん、大丈夫だからね。すぐに治るから!」


 くそ、このままでは押し切られる。


 実質五体しかいない召喚獣に対して、倒せたのはせいぜい二百体中の五十体程度だ。


「どうしたらいいんだ……」


 俺は、何もできなかった。立ち尽くしているだけだった。


 四体の召喚獣が、息もせいぜいでスタミナが切れ掛かっている。


 アラタもできる限り、持っていた古武術で召喚獣と戦っている。


 アスカのキュアラでさえ、傷ついた召喚獣を次々と治療に当たっている。


 俺は、何もできなかった。


「マモル、ごめん、ちょっとつらい」


 レイナ先輩も、爪をかんで焦れている。ガ・ギーンオーの腹部。ガオンが真っ二つにしたダメージが残っていて、ひびが入って今にも折れそうだ。


「ガ・ギーンオー、ジェットパンチ!」


 空飛ぶ鉄拳が召喚獣たちをなぎ倒す。だが、戻ってこなかった。


 たくさんの召喚獣が、飛んできた腕にしがみついて押さえ込んでいる。


 こんな危機迫る状況で、俺は――


 知らず知らずのうちに、俺は奥歯をかんでいた。


「くそ……」


 どうすればいいんだ……。


 と――


「マモル!」

「ガオン!」


「とう!」


 こちらに走ってきたガオン! やっと戻ってきた。


 跳躍して、俺たちが陣取っている真ん中に着地。


「時間が無い! 一気に終わらせる!」


 ガオンが再び、全身に力を込めた。


「ガオン、早く!」

「一発逆転をお願いしますわ!」

「いけ! ガオン!」


「うおおおおおおおおおおおおおおお! からの、笑顔!」


 ガオンがポーズを決めて暑苦しいビックスマイルを見せる。


 フロント・リラックスの姿勢から、上腕二頭筋を見せる、フロント・ダブル・バイセップスのポーズへ!


「はあああああああああ! ふん! からの、笑顔!」


 背中の筋肉を見せ付ける、フロント・ラット・スプレッド!


 そして笑顔!


 そしてそして定番の、サイド・チェスト!


「うぬうううううううう! ふぬう! かーらーの! 笑顔!」


 後ろ向いて、背中の筋肉を見せる、バック・ダブル・バイセップス!


 からのビッグスマイル!


 そしてさらに――


「はあああああああああ! ふんっ! そして笑顔!」


 横向きになって、上腕三頭筋を見せるサイド・トライセップス、そこからの腹筋と足を強調する、アブドミラル・アンド・サイ!


 からの、輝かしい笑顔!


 そしてそして、最もたくましいという二つ名の付く、


「くううううおおおおおおおお! おおおおおおお! からの笑顔!」


 モスト・マスキュラー!


 ガオンの気配がとんでもなく肥大し、増幅し、巨大になっていく!


 両手の手首をあわせ、腰に構えるガオン。


「みんな! 巻き込まれるな! いくぞおおおおお!」


「みんな! 退避だ! ガオンがやるぞ!」


 倒れ掛かったガ・ギーンオーを支えながら、引きずるように逃げるホーリードラゴン。


「戻れ! ハーピィたち!」


 三体のハーピィが、アラタに続いて逃げていく。


 召喚獣たちとガオンの間に、一直線の通路ができた!


 ガオンの腰に構えた手のひらから、すさまじい発光現象が現われる。


「これが! 筋肉の究極必殺が一つ!」


 ガオンが両手を突き出した。



「マッスルウウウ! ビイイイイイイイイイム!」



 ゴバァアアアアアアア――


 激しい高熱波の嵐が、ガオンから放たれた。


 白い光が、一直線に召喚獣の群れに向かって――


 ドガアアアアアアアアアン!


 大爆発で空気と地面が揺れ、激しい暴風が吹き荒れる。


「ナイス……バルク!」


 ガオンがキメポーズをして、ほとんどの召喚獣を一気に吹き飛ばした。


「…………」


「我が筋肉の、大逆転勝利である!」


「き……」


 俺はそのあまりの威力に、


「筋肉からビーム出たあああああああ!」


 全力でツッコんだ。

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