第4話 黒豹の追跡
「しっかり
彼はそう言うと、美果子の後ろに颯爽と乗り込み、手綱を引いてペガサスを走らせた。
男女二人の人間を乗せ、ペガサスが地を蹴り、宙に飛び出すと同時に姿を見せた一匹の
体長二メートルほどはあろうか。肉食獣らしくがっちりとした体格だった。
しばし、二人の男女を乗せ、飛び去って行くペガサスを見送っていたが、獲物に狙いを定め、一直線に飛び、宙を駆けるペガサスを追跡した。
「チッ、もう追いかけて来やがった」
物凄いスピードで追って来る黒豹を、横目で
「しっかり
後ろから彼の鋭い叫び声がした。
ペガサスの走るスピードが格段に上がり、手綱を握りしめる彼の両腕が美果子の身体をしっかり固定する。それをしてくれなかったら、美果子はとっくに地上へ落ちていただろう。
黒豹が追って来るまでは、美果子の身体を持ち上げ、ペガサスに乗せてくれた彼のことで、頭がいっぱいになっていた。
最初は怖い人って思ったけど、存外いい人なのかもしれない。
温かな陽光が降り注ぐ青空を
追手の黒豹は、想像以上にしつこかった。巧みな手綱
この状況を、どうしたら打開できるのか。頭をフル回転させた美果子は、はたと思いついた。
「あの……神力って、使えたりしますか?」
「あぁ?ああ……まぁ……」
不意を突かれ、男子がぎこちなく返事をする。きりっとした表情で、美果子は確認するように尋ねた。
「それなら、頭で思い描いたイメージを、具現化にすることができますよね?」
鋭い美果子の問いに、男子の表情が険しくなった。
「……できれば、使いたくないけど……あの黒豹を大人しくさせるには、そうするしかないか」
後方から追ってくる黒豹を見遣りながら、彼はそう意を決したように返事をした。
澄み渡る青空を翔るペガサスの速度が緩くなった、その一瞬。身体を捩り、黒豹を見定めた彼は、全神経を集中させて、鉄製の、頑丈な檻を具現化にした。
空中に忽然と現れた檻の中に閉じ込められ、完全に身動きが取れなくなった黒豹の追跡が終わりを告げた瞬間だった。
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