いつ休んでいるの?

 自分と兄は、一時期同じ職場で働いていたことがあるのですよ。

 と言っても番帯が全然違っていて、自分が早番の時は兄が遅番。兄が遅番の時自分は早番。もしくは休みだったので、二人揃って仕事をすることはありませんでした。

 そうなったのは全くの偶然なのでしょうけど、それで良かったのかもしれません。だって番帯が同じなら上司が、どっちに仕事を頼んだか分からなくなる可能性もありましたから。


 しかしこうまで番帯がズレていると、同じ家に住んでいても一週間全く顔を合わせないなんて事も、珍しくありませんでした。

 どちらかが家にいる時、もう片方は仕事に行っていたわけですから。

 そしてその時間のズレは、職場でもちょっとした影響を与えていました。


 ある日のこと、自分達より後に入ってきた後輩がこんなことを言ってきたのです。


「無月さんっていったいいつ休んでいるんですか? いつ来ても働いていますよね」


 最初はそれがどういう意味か分かりませんでした。だってその後輩も、働いている量は自分とそう変わらないのですから。

 けどちょっと間を置いて意味を理解した時、自分だけでなくその場にいた他の人も笑いました。

 そう、その後輩は無月という人間が二人いるって、認知していなかったのです。


 そっくりだから同一人物と勘違いして、いつ来ても働いているすごい人って思っていたようなのです。

 まあ確かに後輩視点で見れば、二人同時に自分達を見ることはないですし。まさか双子だとは思わないでしょう。

 しかしまさか数ヶ月、自分と兄を同一人物だと思って接していて、自分も兄も周りの人達もその勘違いに一切気づいていなかったとは。


 けど一番ビックリしたのは、間違いなくその後輩でしょうね。

 驚かせてしまってすみません(^_^;)

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双子エッセイ 無月弟(無月蒼) @mutukitukuyomi

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