49 世界のバグの一つ、マルコトリオン

 「よく来たね。誰かさん。」


 其処には、人間が居た。


 「命なきものに命を与える事は、原理的に不可能だ。」

 その人間は言った。


 もともと、土であった事を。


 土を捏ねる、生命を創るこれが、生命の仕組みだといった。


 「何を言っているのか、分からない。」

 画レ子は、理解に苦しんだ。


 すると、少女は言った。

 「簡単な話じゃないか。マクベスのとある禁忌実験により創られた人間さ。」


 マクベスは土を捏ねて、生き物を創った???。一体どういう事だ。


 「生き物の元を入れたのさ。つまりそう動くようにする設計図を土に練り込んだ。そういう、魔導らしい。科学だとも言っていたな・・・。」


 「マクベスは、味方を作る為に土人形を何体だって創る事が出来る、其れを使って、数多くの研究業績を残した、マクベス人形さ。」


 次元と情報の壁を越えたマクベスからすれば、此の反転世界は取るに足らないもの、彼は、神話の世界の神たちに近づこうとしていた。


 「僕は、トト 此の洞窟の管理人さ。」

 

 

 其の少女は、小さな少女だった。目の大きな、天使の羽の生えた少女だった。

 「死ねば砂に戻る。」


 「禁忌の場には、人間の灰が集められている。死んだ人間の灰を魔導で復元して、リバイバルさせる。此れが禁忌の実験。死んだ人間の魂は戻らない。いわば、肉体の利用。」


 悪魔の研究さ。


 と少女は言った。


 「能力者の能力を独占する為に創られた技術らしいが・・・。何でも、此れは神に背く危険な実験らしくてね。」


 其の対価として、災害が起こった。

 「君たちが、マクベスをやったのもその災害の一つだしね。」

 

 

 マルコトリオン 危険物質さ。


 生命を宿らす実験に憑き物な強力な、呪。


 此処では、ウイルスや、細菌。


 いわば、バグ。


 世界の故障だね。


 災害だ。

 

 

 「君たちもこの世界のバグの一つさ。」


 といっても、君たちのは、人為的ではなく、自然に生まれた、奇跡のバグという点で若干事


なるけれどね。


 「マルコトリオンってのは、危険物質でね、私達の様な創られた土人形は、半径三メートル圏内に触れたものを消し去ってしまう、危険な物質マルコトリオンを発してしまうのさ。だから幽閉されている。」


 彼女の話によれば、マルコトリオンを発する量の多いものでは、直径三百キロ圏内でさえ、危険な物さえいるという。


 「神の呪いさ。」


 彼女はそう言って、己の肉体から漏れ出る、マルコトリオンを憎んだ。

 「生れてきただけなのに・・・。」


 「此の奥は危険だ。マルコトリオンで溢れている。君たちでは一溜りも無いだろう。餞別だ。」

 と言って、彼女は防護服を手渡した。


 所謂、反転世界の外側を充満しているという、レグルと似た物質なのだろう・・・。


 此の防護服を着ても、耐久時間は一時間と持たないらしい。

 

 「マルコトリオンを濃縮してエネルギーとして利用する研究があるが・・・。君たちに其の研究材料で或る、マルコトリオンボックスを渡しておくよ。」


 此の研究施設の中が気になったが、奥は強力な、マルコトリオンで満たされており、到底近づけたものでは無かった。


 「分かったよ。マクベスに変わって必ず、マルコトリオンの謎を解明するよ・・・。」

 カローナはそう言って、自分の胸を叩いた。


 出口があるらしく、其の出口を防護服を着て向けると、摩訶不思議学校の裏庭に出てきた。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る