14 バルマの姉さんカローナに、スペースで稽古をつけてもらい、ヒョーム次の段階、魔識と魔装を会得する。

 「ちょっと。君たち。」


 銀髪ぎんぱつのお姉さんが其処には居た。


 「げ・・・。姉貴。如何して此処に。」


 バルマのお姉さん???。の様だ。


 「雅楽がらくの奴に言われてきてみれば、大変な事に成ってんみたいねえ。 ベム君死んじゃったんだってねえ。」


 「どうして助けてくれなかったんだよ、姉貴あねき。」


 彼女は罰が悪そうにして


 「あたしが来た時には、手遅れだったのよ。凄い爆風ばくふうと光があったから飛んできたけれど、其の時にはもう、ベム君、灰に成ってた。」


 彼女は画レ虚を見るといった。





 「初めまして。私は カローナ・ロンドン カローナ姉さんって呼んでね。」





 「此の人は、俺たちの師匠で、戦いを教えてくれた人なんだ。」


 「どうも、初めまして、文殊 画レ虚です。」


 「ふーん。なるほどね。此れは逸材だ。身体から流れ出て居るフョームをみればわかる。」

 カローナは私を見定めるようにしていった。


 「君たちに稽古をつける事にするよ。」


 「急にどうしたんだよ。ベムと俺を見捨てて、どっか行ってたくせによ。」


 「あれは、お前らが、冒険に行くんだとか、言って飛び出したからだろ。ムカついたから、もうお前らに教えるつもりは無かったが、あの戦いを見るとねえ・・・。ちょっと同情しちゃったよ。あたしゃ。」

 

 私の知らない過去に、カローナさんは、ベムさんとバルマさんに稽古をつけていたらしかった。


 「姉貴・・・。お願いします。俺に指導お願いします。」


 「私も、御願いします。」


 「分かってるよ。」


 こうして、三人はスペースに入っていった。


 「お前等、二人かかりで、かかって来い。」


 此れ迄の戦いから、画レ虚は戦術せんじゅつを考える様になっていた、鬼ちゃんには、中距離ちゅうきょりから大鎌おおがま攻撃こうげき、メロンには遠距離えんきょりからライフルや、バズーカを持たせて射撃しゃげき、画レ虚が刀で近距離きんきょりから攻撃する戦法を作っていた。


 「鬼ちゃん、メロン行くよ!!!。」


 鬼ちゃんとメロンを具現化させた。


 「ほう、具現化か、其れも実態を伴った・・・。」

 カローナは、感心した様子でつぶやいた。


 バルマは、作戦も立てず、一人カローナに突っ込んでいく。


 神速。其れは、神の速さ。光の速さを越えた神の領域。


 「速いが駄目だ。此れでは、相手にもならん。」


 カローナは能力さえ使わず、基礎体術のみで全ての攻撃をかわした。


 「てめえのは、速いだけなんだよバルマ。フョームの動きを読んで攻撃しろ。」


 「フョームの動きってなんだよ。フョームに動きとかあんのかよ。」

 バルマは、憤慨した。


 「あらゆる、物には、フョームが流れている。どんなに速い世界でも、フョームは流れてる、そしてそれらの動きを読めば、神速しんそくの世界でも軽く見える。」


 メロンの鎌と、鬼ちゃんの銃撃、画レ虚の刀による連帯攻撃れんたいこうげきを浴びせるも、カローメはそれらを、気合と呼ばれる、覇気だけで、かえす。


 「今のは・・・。」


 「フョームを思いっきり身体から放出しただけだ。」


「たったそれだけで此の威力か。バケモンだ此の女。」

バルマは衝撃の目で、カローナをみた。


 フョームの動きを読む???。


 如何すればいいんだ。ベムさんでも出来なかった事が私に出来るのだろうか。分からない。新技を披露してやるか。


 「鬼ちゃん、メロン。 鬼龍魔装きりゅうまそう行くぞ。」


 「良し。来たやるか・・・。」

 鬼ヶ島 鬼は返事をした


 「うい。」

 メロンは、面倒くさそうに返事をする。


 幻想魔装げんそうまそうか。完全魔装かんぜんまそうには程遠いが・・・。


 此れは・・・。古に聞く鬼龍きりゅう其の門ものしゃないか。


 此奴、空想の世界で不完全だが鬼龍をつくりだしたか。面白い奴だ。


 其の姿は、龍の尻尾と、鬼の角を持った人型。


 「僕に触れた物は、飛ばされる。」


 白い皮膚。右目は赤く、左目は青い。


 「波動 龍波りゅうは。」


 右手から、青色の灼熱の業火が放出される。


 「逃がさない。畳みかける。」


 まじかよ。


 此奴。


 ヤバイ。


 カローナは、背筋に寒気を感じた。


 フョームによる、武装なしで此の威力・・・。


 「波動はどう 鬼道派きどうは くに。」


 左手から、黒い死の焔が辺りを包む。


 だが・・・。


 「残念だったね。其の程度じゃ、あたしに触れる事さえ出来ないよ。」

 画レ虚は、目を見開いて、驚いた。


 「此れでも駄目なのか・・・。」


 其の時、一瞬の隙がカローナに出来た。其の隙をバルマは見落とさなかった。

 「よくやった。画レ虚!!!。」


 「水龍必死すいりゅうひっし 加速水かそくすい魔波まは。」


 カローナは、突然の攻撃に対応が遅れ、右手が血だらけになっていた。


 「ほう、やるねー。私に技を充てるとは。」


 しかし、其の手は一瞬にして回復した。


 フョームによる呼吸で、負傷を回復する。基本中の基本らしい。


 「君たちは、基礎さえ出来て居ない。」


 「此れから、徹底的てっていてきにフョームのり方を叩きこむ。其処に胡坐あぐらをかいて座れ。」


 三人は、座り込んだ。


 「目を閉じて、フョームの流れを感じゐとるんだ。」


 川の水の流れが聞える。


 空を飛ぶ鳥の鳴き声が聞こえる。


 風の音が聞こえる。


 「耳じゃない。皮膚でもない。匂いでも、目でもない。意識を集中させろ。」





 「此れから、御前たちにフョームによる無の境地に達した攻撃をする、其れがかわせるまで姿勢を崩すな。いくぞ。」





 其れから、何日が立っただろう。


 何か月もそうして、攻撃を受け続けていた居た気がする。


 しかし、何時の頃くらいだっただろうか。


 何か、視えてはいけない、物体の意志のベクトルが感じ取れるようになったのは・・・。




 「其れが魔識だ。」




 「魔識???。」


 「第六感の様なものだ。」


 「時間が止まって見えるだろう。」


 「魔識を使い熟せるものは、物体の、宇宙の動く先が其の動きが分かるようになる。予知能力みたいなものさ。此れが使えれば、神速の動きさえ、予測し、分かっていたかの様に避けられるってわけさ。」



 そうか。此れが、フョームの流れを読むという事か・・・。


 「此れの応用で、魔装は完成する。ベムの魔装は、魔装の中でもリスクの大きい、覇国の魔装、使い熟すには、彼奴には早すぎる業だ。魔獣の力を百パーセント融合させ、身に纏うあの技は、龍の谷でしか習得できない大技。」


 「通常の魔装は、力の二十パーセント前後だ、其の感覚を維持しなければ、ベムの様に強大な力と引き換えに死ぬぞ。」


 バルマは、フョームが使い熟せず、未だ、瞑想世界で、攻撃を受け続けていた。

 「あの、私、合格で良いんですか。」


 「未だ、特訓は続くが、此の試練は突破だ。バルマの奴は、フョームより、能力や、技、剣技、肉体強化で、努力して実力を付けてきた、いわばエリート。あたし、も彼奴が未だ十歳にも満たない頃から見てきたが、其の戦闘スキルは類稀な物があったしかし、其れがかえって、フョーム習得の妨げになっているのだろう。」


 「と、言いますと。」


 「五感しか見て居ないんだ、五感を信じ切っているせいで、フョームの動きが見えない。此れじゃ、百ねんやっても無理なわけさ。神速なんてのは、普通の人間だったら不可能な速さなんだ、其れを肉体の強化と、長年の修行で完成させてしまった此奴は天才さ。だが・・・。天才ゆえに、フョームの習得には、全く違う感覚が必要なのをわからないのさ。」


 其れから、何年が過ぎただろう・・・。


 もう、どれほどの時間が過ぎた事か分からない。


 画レ虚は、実践の練習をカローナさんと、其の使いの者としていた。


 しかし、未だバルマは胡坐をかいたまま、カローナからの攻撃を避けられずにいた。




 そして、そろそろ、バルマの命の危険が迫るほどのダメージを受けた頃、バルマは、考えて居た。


 俺は、一体何をしているんだ。もう死んじまうのかな。意識が遠のいていく。


 そんな中、かつて、ベムとカローナと幼い頃稽古をつけて貰っていた時の事を思い出した。


 「お前等には、未だ早いが・・・。目で見えない物も或る。其れが見える様になった時真の強さを手に入れられる。黄色い閃光せんこうの様なイメージが流れて来るんだ。びりりってな。」


 あの頃、師匠は、意味の分からない事を言っていたな。あれは何の事だったんだろう・・・。




 次は右から、神速で太刀が来る。




 ん?俺は何を言っているんだ。如何して分かるんだ。右からなんて・・・。


 其の軌道が、緑色の線で示されている。


 此れは何だ。


 気づくと俺は、先生の神速の太刀筋たちすじを目を瞑って躱していた。


  「此れが・・・。フョームの流れなのか。」


  「よくやったなバルマ。冷や冷やしたぞ。」

 カローナは安堵の表情を浮かべた。


  「やったーーー。バルマがやったよーーーー。」

 

 そして、三人は、空間から出てきた。


 一週間程の時間が既に経過していた。

 

 一時間が二週間だから、七年近く修行した事に成るのか・・・。


  「あの空間では歳を取らないのですか???。」

 僕は尋ねた


  「あの空間での七年は一週間の時間に成るのさ。」

 カローナは答える。


  「なるほど。」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る