第十三話 くだらない
ワタシの名前は【
そして、そのただ一つのことっていうのは幼馴染の【
「また、ボロボロだね…」
また…そう、またボロボロになってる。
そして、今度のはいつもより酷い。返事をすることさえできないみたい。
「黒川さん…、どうしてこんなになるまで戦うんでしょう?」
今、そんな疑問を漏らしたのは、
「どうしてって…、とてもくだらないことだよ」
「くだらない?それって、どんなことなんです?」
ワタシは、心底くだらないと思いながらも教えてあげる。
「両親を亜人に殺されたんだ」
「なるほど、それで復讐に燃えている。というわけですね?」
「そうみたい」
「うーん、それは確かにくだらないですね」
「そうでしょ?」
「ええ、実際に今、目の前で殺されそうならわかります。失いたくないでしょうから。目の前で、殺されたのを目撃した瞬間も、わかります。それ以降なら、全然わかりませんけど」
赤根君は、ため息をつく。
「まして、もう失ってしまったもののために…、どうしてそこまでする必要があるんです…?」
「心の底から同意見だよ…」
そのやり取りを聞いていた、
「お前ら…、何を言ってるんだ……?」
本当に理解が出来ない。といった表情でこちらを見ている。確かに、信のやっていることは理解できないと思う。もっとも、ワタシも、信が死んじゃったりしたら…、いや、考えるのはよそう。
「くだらない…?本気でそう言っているのか?」
どうやら、信に向けられた言葉ではないみたい。そして、その言葉は…、ワタシと赤根君の二人に向けられているようだった。
「命が…、失われた命がくだらないなんて…、そんなことがあるわけがないだろう…!」
続けて、
「そうだ、そもそもD.M.Sは、市民を、人の命を守るのが仕事。そして、使命だ。そこに所属した以上…、希望した以上…、
ワタシと赤根君は、互いに顔を見合わせる。赤根君は、心底理解が出来ないといった顔だった。おそらく、ワタシも同じ表情をしてると思う。
赤根君が、反論する。
「同じ…?そんなわけがないでしょう。そもそも、僕は他人の命なんてどうでもいいんですよ。まあ、組織に属している以上は、守りますけどね。それでも、守りたいから守るわけじゃありません」
「何を…‼」
続けて、ワタシも反論する。
「その通りですよ。ワタシだって、信が入るって言うから、ワタシも入っただけのことなんです。信がやりたいって言うから、手伝ってるだけです」
「何を…、何を言ってるんだ……⁇」
赤根君が、切り出す。
「それよりも、早く救援を呼んだほうがいいんじゃあないんですか?ほら、彼…、もうボロボロじゃあないですか。『D.M.Sは命を守るのが仕事』…、なんですよね?」
「…、そうだな」
黄瀬さんは、デバイスで救援を要請する。
「……、今は人類の味方のようだからいいが…、敵にでもなってみろ。その時は、敵だ」
赤根君が、笑いながら答える。
「やだなあ、そんな怖い顔しないでくださいよ。僕は、『人類の味方』ですよ~?
「そうできるよう、望んでおくよ。とにかく、今のは聞かなかったことにしておく。仲良くしような」
しばらくして、救援が到着し、信はD.M.Sの病院へと運ばれていく。
元気になるといいね、信‼
◇
「ここは…?」
「よかった…‼気が付いたんだね」
「
「そんなこといいじゃない。助かったんだから。また、次があるよ」
「ああ…」
「他のみんなは…?」
「みんなは、
「そうか…、俺だけか」
「ほら!そんな暗い顔しないの‼」
「そう言われてもだな…」
「とにかく、今はケガを治すことだけを考えて」
「む、むぅ」
信はいっつもこんな調子だ。本当に、後先考えずに行動しているというような感じだ。昔から、厄介ごとに首を突っ込みたがるし…。
でも、そんな信がいいんだけどね~‼
はあ~、復讐に燃える信…、どうしてそんなにかっこいいの…?ボロボロになって、ベッドの上に居る信…、どうしてそんなにかっこいいの…⁇一人じゃあ、なあんにも出来ない信…、どうしてこんなにも
「ふむ…」
『ふむ…』⁇何そのため息⁇そうかあ‼動けないのがもどかしいんだね…。でも安心して…、もうそろそろ来る頃だから。
「ちわ~、
ほら…、時間通り♡
これで、元気になるね‼
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