第24話

 その予想通りにパーティ終了後に軽い打ち上げの中、店長の彼女さんとアタシは一緒に別室に通された。

「おかげ様で今日のパーティは盛況のうちに終わりました。ありがとう」

 店長はコック帽を取って頭を下げた。

「でもぉ…」

 顔を上げた店長の笑顔が可愛いのに怖い。

「いっつも言ってるでしょ! 私にはどうやっても貴方たちの辛さは分ってあげられないの。だから無理はしないで自分の身体を大事にしなさいって!!」

「あっ、あっ、でもほら店長。彼女が来てくれたから助かった訳だしー」

「彼女ちゃんは、罰として一週間口きいてあげません!」

 彼女さんのフォローも空しく店長にしては厳しい罰が告げられてアタシは、ちょっと笑ってしまう。

「今日はもういいから外にタクシーを待たせてるから彼と帰りなさい。それから……」

 店長が近づいて耳を貸すようなゼスチャーをする。アタシは痛みが出ないように気を付けながら腰を下ろす。

「またおっぱいを切り落としたいとか子宮を切り取りたいとか思っているでしょう。いい? そんな時の貴女は情緒不安定になっているの。できることはなんでもしてあげるけど自分でも気を付けてね」

 見抜かれてる。

 アタシを抱きしめる店長を抱きしめ返して、まるで合図をしたようにお互いに手を離した。

「今日はもうゆっくり休んでね」

 見送られて出た先にはタクシーが止まっていて中にはカレが荷物を持って待ってる。

「大変だったんでしょう? お疲れ様」

 そう言うカレの左足も小刻みに震えている。

 元々出だったとはいえ人数が減ったことでホールのカレの負担も大きかったはず。

「そっちもお疲れ」

 シートに座わると車内にイタリやんと同じ匂いがする。

「ああ、店長がお礼にって。日持ちする物もあるけど今日は食べられる物を食べなさいって。造血剤入りって笑ってたよ」

「ふぅ」

 車が走り出すと一呼吸したアタシは身体をカレに預けた。

「……手ぇ貸してくんない?」

 小声で言ったせいかカレの反応が無い。

「ねぇ、手ぇ――」

「聞こえてるけど」

 寄りかかっているから頭の上から聞こえるカレの小声がくすぐったい。

「運転手さんに見られちゃうんじゃない?」

「シートがあるから大丈夫だよ」

 こそこそ小声で話しながらアタシはカレの右手を取って上着の下に隠してウエスト緩めのレギンス下、下腹部に手を置く。

 温かくて落ち着く。

「着いたら起こすから寝てていいよ」

「ん、お願い……」

 疲れもあって既にウトウトしていたアタシはお言葉に甘えて目を閉じた。

 この後にヒステリックに怒鳴り散らしてカレを泣かすだなんてことは夢にも思わずに。

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