第23話
最悪のタイミングだった。
その日、アタシは最悪に重い生理二日目。
痛み止めを飲んで一旦はキッチンで横になったもののバイトに行ったカレの手が無いと寒すぎて、ならベッドの上でと楽な体制は無いかモゾモゾ身体を動かしながらうんうん唸っているような有様だった。
そこにイタリやんの店長の彼女さんから連絡が入った。今夜は常連さんの大事な貸し切りパーティがあるのにバイトの何人かが急に休むと言い出したらしい。
当ては全部当たった上で手が足りず、彼女さんは無理を承知でアタシに連絡してる。
断る理由は幾つあっても断れない理由が一つだけ。店長にはアタシだけでなくカレも恩がある。
横になっても辛さに変わりが無いなら意味のある辛さにしよう。そう考えてアタシは本当の意味で重い腰を上げてヨロヨロとイタリやんにいつもの何倍も時間をかけて出勤して、
「帰りなさい!!」
と迫力のない可愛い顔の店長に怒られた。
それを彼女さんや従業員さん達がお店の為だとなだめて、ようやくアタシは裏方に回った。
時々、痛みにしゃがみ込みながらも厨房からホールに出すパントリーまで料理を運んだり、皿洗いをしながら様子を見るとパーティは順調に進んでる。
その様子にホッとしたからなのか、急激な痛みにアタシはその場にうずくまった。
(やった……)
お腹の奥から流れ出るドロッとした感覚の後に続く生暖かさ。
「さっ
自分でも動揺しているのが分かる声で隠語を使って、ヨロヨロと更衣室へ行って変えの制服とポーチを持ってスタッフ専用のトイレに行く。
スラックスを脱いだ途端にもわっと溢れ出す臭いにイライラが高まる。
「なんでアタシは女なんだよっ!」
握った拳で太腿を叩きながら今すぐキッチンに行って包丁で腹を裂いて子宮を取り出したくなる衝動に駆られる。そうだ。ついでに乳房も切り落としてしまおう。
立ち上がろうとしてめまいで壁に寄りかかり、下がった視界に内腿を伝わる血が見えた。
アタシは座りなおしてギュッと目を閉じて深く何度も深呼吸を繰り返す。
落ち着けアタシ。そんなことしても何も解決しない。
何度目かの深呼吸の後に脱いだスラックスを扉にかけて、ウェットティッシュやなんやらでデリケートゾーンを綺麗にして新しい下着に夜用のナプキンを装着してトイレを出る。
染み抜きなんてしてる暇は無いから、もう一度戻った更衣室のロッカーに汚れ物を突っ込んで腹を押さえながら厨房に戻るとフライパンを煽る店長と視線があった。無表情にジーっとこっちを睨んでて怖い。
これは……後で怒られる流れだ。
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