第11話
望んだ訳では無いけど結果として大事――警察沙汰になった。
担任…元担任がアタシに作らせた資料を大学関係者にばら撒いて金をもらっていたり、盗撮写真の数もかなりあって校長も教頭も黙っていられなくなったらしい。
元担任は逮捕された。
アタシの家庭環境を知って担任が一年の時から目を付けていたのは分かってたんだ。
だから奨学金の話や推薦の話を持ち出したり、資料作りに協力させて一蓮托生にしてあわよくば身体でも差し出させるつもりだったのだろう。
盗撮写真はそういう目的としか思えないようなものも多かったし。
当然、アタシも無事では済まなかった。
奨学金を盾にされていたとは言え協力したことには変わらないからだ。内々だった大学推薦はパーになった。選択肢に楽な方を選んだだけで元々合格できる実力はあるから受験には問題ない。
髪の色は校長直々で黒に染めるように頼まれて断る理由も無いからまた黒髪に戻した。クラス委員長の立場はそのまま。みんな自分だけはやりたくないと思っているんだろう。メンドクサイから。
舌ピについては他にもピアスをしている生徒がいるから何も言われなかった。当たり前だって。着けてる場所で区別するなんて間違ってる。教師連中は知らないだけでボディピアスしている子だっているのに。
唯一の良かったことは、陸上部にお咎めが及ばなかったこと。それだけは心からホッとした。努力する奴は報われるべきだとアタシは思うんだよ。うん。
中でも勇気ある行動でお姫様を助けたとカレは王子様扱いされている。
言われているお姫様が、仮にアタシだとしたらとんだ灰被り姫だ。ご愁傷様。
「――で? いつまでついてくんだよ」
事情聴取やらなんやらで警察を出るとカレが待っている。毎回何時間待っているんだか。
毎回のように無視して歩き出すと無言でついてくる。
しばらくは無視していたが、とうとう声をかけてしまった。
「ほら、退学になった彼らが復讐に来るかもしれないから」
そう。あいつらは退学になった。
アタシにしたことで、じゃない。他にも担任と悪さをしていたからだ。
つまりあの日のちょっかいも裏で担任が糸を引いていたって訳。
陸上部のエースと仲良くなられたら手が出せなくなるから脅そうと思ったと。
「言いたかったんだけど。女に手を出すなーはないと思わない?」
声をかけられたからか腕組みをしながら困ったような顔でカレはアタシに文句を言う。
ブチ切れた時にそんな風に叫んだらしいけど覚えてないんだよ。
恐怖も何もかも怒りで塗りつぶしたような感じだったから。
「しつっけぇな。覚えてないんだからしょうがないだろ」
「うん、でもまあ。情けないことに助けられたのは僕なんだけどね」
実際、情けなさそうにカレは肩を落とす。まるで叱られた犬みたいだ。
「……そうでもないよ。あの時、アタシは本当にパニックってたんだ。アンタが来なきゃ教室から連れ出されてどっかで
「えっ? 回すってなんで回転?」
天然ボケ? それとも本当に知らないのか?
ほぼ一七〇のアタシより少し高いカレの目には?が浮いてる。
「り、ん、か、ん。輪姦。あいつらに犯されたかもしれないってことだよ。アンタは聞いたんだろ。咥えさせるって。最低でもそうなってたかもしれなかったってこと」
やっと意味が分かったのかカレは顔を真っ赤に染め上げて右手で口元を押さえ右に視線を落とす。
「そっ、そんなの最低だ」
「でも世の中にはそう言うのがいるんだよ。だから、ありがとな。助けてくれて」
アタシの礼に何故かカレは突然ポロッと涙を落とした。
「なに泣いてんだよ」
「君、君がそっそんな目に合わなくて良かったって…思ったら急に……」
溢れる涙を止められなくてオタオタするカレの目元をハンカチでそっと押さえる。
「大来で泣くなよ」
「ごめん。でも止まらなくて…」
ぐいっと顔にハンカチを押し付けてカレが手で押さえたのを確認してアタシは手を離す。
「しょうがねぇなぁ。近いから家で泣いてけよ。本当のブラックコーヒー淹れてやるから」
「いいの?」
「その代りアタシに手を出そうとしたら痛い目見るからな」
「なんで僕が君を叩かないといけないのさ!」
涙をぬぐいながらカレが怒る。
やっぱり意味が分かってない。
きっとカレにとって女はそう言う対象じゃないんだろうな。
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