Killing time another world time 4

another world 久音と残った祥一郎達


「では、久音の次は私でお願いします」

夕凪はそう言ってまた服を脱ごうとするので押し留めた。


「早過ぎるよ!君は短絡的過ぎる!」

「まず身体の関係からと思ったんですけど?」

サチは頭をブンブン振った。

「違う違う!それ最後だから!」


「だって」「ん?」

ガシッと音がしたかと思うぐらい夕凪はサチにしがみついた。

「私が大きくなったらサチさんよくなくなるでしょ?私、いつ大きくなるかわからないじゃないですか。ですから早い方が」

「別にいいよ!身体目的じゃないから!」

サチはのけぞって引き離そうとした。


「じゃ、先に付き合いましょう」

夕凪はがっちりホールドしたままサチをキラキラした大きな目で見上げた。

「あ、うん、うん?」

「取り敢えず、ここの家の部屋増やして下さい。移ってきますので!よろしく!」

夕凪は手を離すとボタンを止め、去っていった。


サチは呆然と夕凪を見送った。

「何だったんだろう?え?いつの間に僕は夕凪と付き合う事になった?しかも家に来るって?それ付き合うんじゃなくて同棲…」


この狭間の世界は久音が地面のプルプルを固めて壁を作った屋根の無い家、通称クオンハウスがある。2人は勝手に新たな部屋を作って繋げていった。ドアは一から創造してみたが、そのうち消えてしまうのでないままだ。結果部屋と部屋の間にもう一つ直接見えない様に部屋を作る。


暇なのでサチが放射状に部屋を作ったり階段をあちこち作ったりして遊んでてウィンチェスターハウスのようになっている。

絶対文句言うだろうな。

どうせ夕凪は絶対自分の部屋を見えない様にして欲しいだろうからまた余計な部屋が増える。


夕凪はベッドを作ってその周りを囲っただけの部屋を家から離れたところにサチに作ってもらって寝起きしていた。昼間はサチと一郎が住むクオンハウスにいる。

「あまり、変化はないから、いいか」サチは楽観的だった。


その次の日、(正確な時間はわからないので適当)サチは夕凪に起こされる。

急に突かれたのでぼーっとしていたが、起こしに来たのが夕凪だと知って飛び起きた。

「何で、そんなに驚くんですか?」

「襲いに来たのかと」サチは半分本気で言った。

「敵じゃないんですから』夕凪は呆れて言った。

違う意味なんだけど、ま、いいかと溜息をついた。


「デート行きましょう!その前にデート行くところを作りに行きましょう!」

夕凪の謎提案が始まった。


「部屋作るのは?」

「作らなくて大丈夫!サチさんの隣でいいです。何なら同じ部屋でも」

「相変わらず、ブレないな。面倒だな。僕は久音の部屋に移る」


「久音とサチさんの部屋隣だったんですか?」

「違うよ。離れてた」

「…私が来た意味がないでしょう!久音の部屋は残しといて、サチさんの部屋大きくして其処を2人で使いましょう」

「ええ?意味わかんない」

「時間がないので恋愛と同棲同時進行で!!」

夕凪は思い切り戸惑っているサチを部屋へ案内させた。


ドカン、ドカンと音がした。

一郎は音にビクッとしたが、先ほど夕凪が来ていたので改めて確かめには行かなくていいなと動かなかった。下手に行くと手伝わされるのがオチである。


ダイニングスペースにやってきた2人は、おにぎりを作るべくお櫃に入ったご飯と具、海苔を出してせっせと握っていた。


サチは乗り気ではないのが丸わかりだったが、諦めたのか、無言でシャケを詰めている。


一郎は呼ばれたが、2人を横目で見ながら食べる専門だ。

ちゃっかり「ツナマヨも作って」とリクエストしている。


用意が整うと

「ちょっと出かけてきますね」

「ああ、お出かけという名の掘削行ってくる」

サチは一郎に話して、悲壮な顔して出ていった。

「湖作るんだって」


一郎は出してもらった味噌汁を飲んでいたが危うく噴き出すところだった。

「なんで?」

「デートする場所作るんだって。一郎もどう?」

「誰とすんだよ」

誘ってくるサチをキッパリ拒絶して一郎は二人を見送った。

遠くで爆発音が聞こえた。

一郎は心から行かなくて本当に良かったと胸を撫で下ろした。


夕凪は意気揚々と、サチがグッタリしながら帰ってきた。本当に湖を作って、周りに木を植えたらしい。

主にサチの力で。


「毎日行って手入れする必要があるから、それをデートと言うのだろうか?」サチは夕凪のせいでデートと言う言葉の定義のゲシュタルト崩壊を起こしていた。

「次は山かな〜川かな〜どっちがいいですか?」「怒っていい?」


家では同じベッドで寝起きする様になった。

それからまもなく、サチが赤い顔で

「誘惑に負けて夕凪に手を出してしまった。女とするのも、わりかし良かった」

とリビングルームにいた一郎にその時の様子を事細かに話した。

「ふーん、よかったじゃん」

澱みなく喋るサチに口を挟めず、興味無さそうに返した。


しかし、一郎はその後直ぐに逃げ出した。命大事に。

サチの後ろに半泣きで激怒している夕凪が立っていた。

「何でそんな事、一郎さんに言うのよー!デリカシーなさすぎ!」


「他の祥一郎達にも既に言っちゃったけど?」

性に関してオープン過ぎる彼はあっけらかんと言い放った。


結果夕凪に反省と称してしばらくプルプルに首まで埋められてしまった。

難なく脱出できるが、サチは夕凪の気が済むまでそのまま居た。塩や爆弾、バズーカよりはるかにマシだからだ。 


どうして言ったらダメだったのか、サチは今でもあまりわかってない。


その後まもなく、サチと交信できるようになったはじめ(ショウはできない)からずっと心待ちにしていた連絡が入った。


“ショウが久音を見つけて引き取った“


「すぐ行く!」

家に居たサチは、以前見つけた狭間の壁の隙間から抜け出そうとして持てる力を有りったけぶつけた。


事情を知らない夕凪と一郎は急に外に走り出したサチを追いかけて行くと、壁の前で気を失って倒れている彼を発見した。


夕凪がサチが力を使いきっているのがわかり、ピンときた。


「全く、どうして私に先に言わないんですか!無茶して!」

ようやく意識を回復したサチに怒って言った。

「いけると思ったんだけどな」

「行けたとして、どうやって帰って来るつもりだったんだ?」

「考えてなかった。行く事ばかり」

一郎は普段らしからぬ無鉄砲な行動をしたサチに驚いていた。



夕凪はため息をついた。

「そんなに思い切りやっても駄目です。力が回復したら、私が役に立つと思いますので、もう一回やってみましょ?」


「そうだよ、君がいた」サチは夕凪の手を両手で掴んだ。

「早急に是非よろしく頼む。僕だけじゃ駄目なことはよくわかったから」

「サチが夕凪に頼み事するなんて」と一郎はさらに驚いていた。


夕凪は「はいはい」と彼の両手の上に手を重ねて何回か上下に振った後

「イメトレしてくる」と出て行った。


しかし、その後一向に帰ってこない。

「アイツ、また無茶な事して倒れてんじゃないか?」

一郎がサチに言うと、さすがに心配になったサチは起きれるようになったので探しに行った。


力はまだ少ししか回復してなかったが、どこにいるかぐらいは探れる。

『あれ、隙間の方角じゃない』

湖の方だった。

練習のついでに草木の手入れでもやっているのかと訝しげに行くと、三角座りしている夕凪が見えた。頭を膝につけている。

近付くと肩が震えているのに気が付いた。


「夕凪、大丈夫か?」

また、何かやらかしたのかと思ったが湖面は静かだった。

近付いて彼女の肩に触れようとした。


「やっぱり、久音の方が好きなんですね。当たり前ですけど」

夕凪は泣いていた。


サチはそのまま固まった。


「いつも冷静なサチさんが、あんなに取り乱したの

初めて見ました」

涙で震える声で言った。

「向こうに行ったら迷惑かけるから残ってるって言ってたのに、久音て聞いた途端に」


サチは姿勢を戻して真っ直ぐ立った。


「ごめん、黙ってたけど、いなくなる前に僕が転生してって彼に頼んでたから」


夕凪はサチを見上げた。

「行ってしまうんですね」


「行きたいけど、一目見てみたいだけだよ。向こうにいると悪霊と物怪寄ってくるし、転移するかもしれないし」

「そんなの、今のサチさんなら両方跳ね返せます」

「いや」


サチは夕凪の横に座った。

「どうせ君も一緒に行くから」

サチはにっこり笑って言った。

「二人で帰って来よう」

夕凪は目を見開いた。


サチはいつの間にか彼女の大きな目も好きになっていた。

「いいん、ですか?」

「一郎だけじゃ可哀想だし、あっちでも、こっちでも、僕がいないと夕凪がやらかした時修復できない」

「そんなに失敗ばかりしなくなりましたよ!」

夕凪はプイっと顔を逸らした。


「ほら、一郎も心配してたよ。早く帰ろう?」

サチは立ち上がると夕凪に手を伸ばした。


少し躊躇っていたが、手を伸ばして掴んでもらって立ち上がった。


サチは徐ろに屈むと、夕凪の頬にチュッと音を立ててキスをした。

「本物の5歳児には、さすがに手を出さないよ。夕凪ならいいけど」

「そっちですか!!」

「僕の奥さんだからね」

サラッとサチは言ったが、そういえば初めてそう呼んだかも、と夕凪を見た。

「お、く、さ、ん?」夕凪の顔が、一気に赤くなった。


「ちなみに奥さん、此処でする?家に帰ってからがいい?」

「え、まだ力戻って無いでしょ?」

「違うよ、鈍いなあ」

サチは笑いながら夕凪の頬をつついた。

「これの続き。ケンカした後は燃えるってはじめが教えてくれたんだ。試してみようよ」


「埋まれ!」

サチは一瞬でプルプルの中に首まで埋まった。

「これ、前も埋められたけど、気持ち悪いんだよなあ」


「知りません!じゃあ、ほかのお仕置き考えておきます」

夕凪は怒って走って帰っていった。



Killing time another world time 完



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Killing time 暇つぶしの世界での出来事 Koyura @koyura-mukana

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