another time 8

「寂しいのは、此処に来てからずっとだよ。久音がいないのが一番堪える」

ショウは考え考え言った。

「ずっと一人より二人いて片方が居なくなったのが余計辛い。でも、久音が僕の唯一なんや」



「駄目だ、過去のことだろ?やっぱり僕で我慢しろ」


ショウはナルシにガッと両頬を手で押さえられて上を向かされた。

「止め―」言い終わる前に食われる勢いで口付けしてきた。中をしゃぶり、唾液をこぼしてくる。緊張で息が止まって苦しい。ナルシは構わず乗しかかってショウの舌に自分のそれを絡み付かせ吸い上げた。

その後は顔や頬に何回も口付けられた。漸く息を継いだ。

「止めろよ、俺はあいつ以外に抱かれたく無い。あいつの感触を忘れたく無いんや。お願いやから止めえや!」

両手でナルシの肩を突っ張って上に逃げると腰をがっしり抱かれた。

「でも、もう会えないんだろ?相手はどうしてる?」

「どうって、わかるか、そんなん」ホールドされてる腕をガンガン叩きながら喚いた。

『僕の事覚えてるかどうかもわからへんのに』言おうとしたが言えなかった。


ナルシはショウのトランクスの中に両手を突っ込み尻を掴んだ。

「止めろったら」逃れようと暴れたがぬるついた感触と共に尻穴に指を二本入れられた。

ああ、と叫んだがそのまま抜き差しされて内壁を擦られると身体が硬直した。嫌でもその指の感触を覚えている。

「そんな奴忘れろ!」

「嫌や、久音!」もう片方の手は前を愛撫する。

「あ、駄目、やだ」


ナルシの手を振り払う腕力もないショウはされるがまま巧みな手つきにあっという間に上り詰める。

「イキたくない、嫌や、久音じゃ無いのにイクの、嫌やー」

一度だけしかナルシの愛撫を受けただけの身体だったが、既に馴染んで快感を思い出している。


悲鳴を上げて遂にイってしまった。

肛門への攻めは容赦なく続いて指が三本に増えて中を押し広げている。イったきり戻ってこれず、ショウの精液で濡れた指で乳首をこねられ、咥えられて軽くかまれたり舐められると気持ちよさが更に暴力的に高められる。


『あかん、抵抗できへん』

ついにショウは「許して」と啜り泣きを始めた。

すると、指が抜かれて乳首への刺激も止まり、彼の身体が自由になった。


ナルシがバスローブを脱いだ。下着はつけていない。ショウが必死にずり上がって逃げようとしたが、あえなく捕まって仰向けに押し倒された。

ショウの濡れたトランクスが引き抜かれ、裸になったナルシが足の間に身体を寄せてショウの両足の膝を持ち上げ広げた。


「お願い、入れんといて、せや、口でするから」

無論口淫なんてナルシにするとか考えられなかったが、必死に懇願した。

ナルシはちょっと顔を顰めただけで、ショウに乗し掛かった。

「それ、また今度ね」

穴周囲は柔らかくなってはいたが久音のモノより大きい剛直が割り入った時は息が止まった。内臓が押し上げられるような感覚に呻いた。


「信じられへん!」吐き出した息と共に叫んだ。

更に奥へ奥へと入っていく感じに『これが、久音だったら』と思ったがこんなに強引に入ってきたことはない。

しかも「や、何で?この前より、大きい、ヤメロ」悲鳴を上げても

「覚えてたの?それは光栄」

遂に全部押し込められた。「いやぁだー」その衝撃で、また精液が溢れた。

『なんで、なんでこんなんでイくねん』

情けなくて涙が溢れた。


「ああ、ショウの中熱くて気持ちいいよ」と顔のあちこちにキスし始めたので顔を背けて「やめてーや」と言ったが震え声で小さな声しか出なかった。


両手を無理矢理繋がれて押さえつけられた。身体をくねらすも中で居座るモノの存在を否が応でも感じるだけだ。


「久しぶりだな。動くぞ」ずるっと抜け出るとそれにも感じるようになっていた。ナルシは半ばまで抜いて一気に奥を突くを繰り返した。「んんっ、あん、ヤッ」


もう、ショウは何度もイって意識を保つのも限界に近く、奥を突かれる度に嬌声を上げた。

とうとう、膣の中まで指を差し込まれてそれぞれ奥を突かれるともうダメだった。全てを暴かれて未知の快感に涎を飲み込むことも忘れて口の端から流れ落ち、それを吸い取られ、舐められても分からず反応できなくなった。


でも、心の中で久音への罪悪感も消えず、呪文の様に「久音、許して」と切れ切れに呟いてずっと謝り続けた。


「なあ、ナルシって言って?今君を抱いてるのは、ナルシだ」

久音、と最初は言っていたのに、流れてきた自分の精液が絡んで更に滑りがよくなり、何度も攻められて請われるといつの間にか彼にしがみついて何回もナルシと呼んでいた。

気持ち良さで反応したところを重点的に攻められ、我も忘れてただ快楽の直中にどっぷりと浸かっていた。


腰の動きが早まっていき、ようやく終わりが見えてきたが、今度は嫌な予感で我に返り、力の入らない腕でナルシの身体を叩く。ナルシは腕ごと抱え込んだ。

「ごめん、やっぱりショウのこと好きだ。もう、イきそう、中に!」

「嫌や!せめて中に出すの止めて、止め、許して」半狂乱になって腕を抜くと肩を爪を立てて掴んだ。

しかし、ナルシが叩きつける様に最奥でショウの中に精を吐き出した。同時にショウはイきながらも絶望で、「久音!」と叫んでついに気を失った。


「最後にまで違う男の名を叫ぶなよ…」荒い息のままナルシのボヤく声はショウに届かなかった。


それから抜かずにショウを攻め続けたが、意識は戻らず反応が殆ど無かったので止めて解放した。

その代わり服を全部脱がせて全身を愛撫し堪能した。ショウは多少呻いたり、顔を顰めたりしていたが意識は戻らなかった。それでも満足して濡れタオルを用意して、全身を拭いてやった。我慢できなくてその後もう一度あちこち舐めた。



次にショウが目覚めた時、何処にいるか30秒ほど考えた。


そうや、ナルシの家に知らん間に来て、無理矢理ベッドに連れ込まれて、またやられた。思い出すと身体が震えて動悸がしてきた。


「ナルシって言って?そしたら許してあげる」

激しく揺さぶら続けて耐えきれず、思わず名前を呼んだら、全部奥に入ったまま起こされて骨が折れるかと思うぐらい抱きしめられた。

やっと終わったと思ったのに今度はその体勢で下から攻められ、思わず何回も呼ぶ羽目になった。


もう、最後は殆ど記憶にない。あんなに長時間攻められて連続でイったのは初めてだった。両手で震える身体を抱きしめた。


ナルシの自分への激しい執着に寒気がしたのは、アイツのせい、だけではなく本当に寒い。


僕なんも着てないやん!


してる時は上は服を着てたはずなので、意識を失ってから脱がせた様だ。それから何をされたんだろうか?余計寒気がした。

静かにベッドから降りた。全裸だったが昨夜着てた服が近くに無い。気配を探って見渡したがナルシは不在のようだった。


少し安心して立とうとしてガクッと膝が折れて下に座り込んでしまった。

腰と太腿が痛だるい。勿論お尻の違和感も凄くある。されてる最中ずっと力を入れていたんだろう。

何とか立ち上がって足を引き摺る様にソファーのテーブルに行った。

スマホを取って、時間を見ると11時だった。3:33に起きて、トイレ行って、それから一体いつまで犯されてたのだろう?考えるのも嫌だった。


スマホにメッセージが来ていた。

「ゆっくり休んでて。昼前に一旦帰ってくるから、ご飯食べてから家まで送るよ。ショウは痩せすぎだからしっかり食べてもらうから」


「知るかい!何様やねん!」思わずソファーにスマホを投げた。壊れたら困るのでそこにした。

ソファーの端に畳まれた服が置いてあった。ショウが昨日買って着てた服で、下には紙袋があって家から着ていった服が入っていた。

ナルシが帰って来るまでに出ようと家から着てた服に着替えた。

買った服を代わりに紙袋に入れてスマホを取ってハタと気付いた。

「財布がない、てか、バッグごと無い!」

メッセージにはショウの持っていたボディーバッグのことは何も触れていない。

急いで昨日教えられたラインを送ったが既読が付かないし、電話も留守番電話になる。

ブツクサ言いながら部屋のあちこちを探したが見つからない。

落とした?なら言うよな。まさか、持ってってないやろな!ギリっと歯を食いしばった。


12時前に帰ってきたナルシにバッグの事を食ってかかると

「そー言えば車の中に置いたままだった」

と悪びれずに言った。

「どうせ車で送るから良いだろ?」

「良うない。一人で帰る!僕は早く此処を出たかったんやけど!」彼の腕を掴むと「バッグ返せ!」

と引っ張る。

「駄目だよ、君痩せ過ぎだ。拒食症ってやつ?だからセックスの途中で貧血起こして気を失っちゃうんだよ」

「途中?あんだけやっといて途中⁈」また倒れそうになった。

「それに、ショウに話があるんだ。ランチの後聞いてもらうから」

有無を言わせない口調に、さすが社長だなと納得した。


「気絶すんのは、なる!食べへんのは訳があんねん。こっちはもう用無い。早よ自分帰って寝たいねん」

「いつも?」ナルシは不満そうに返したが、こちらはわざと言ったので大きく頷いて見せた。


ナルシは軽くため息をついたがすぐに平静に戻った。

「昨日の服着なよ。洗って置いてただろう?似合ってたよ。颯人のセンスいいだろ?」

「颯人君ええ人やね、大切にしてあげや。そして昨日と一緒の服やったら、ここに泊まったんバレバレやんか。ランチはこの服装でも行ける普通のとこにしてや」

「じゃ、この服はまた次回に」

「また、じゃない、2度と無いて!」


ぶつぶつ文句を言いながら彼の腕を掴んだまま、出て行くとすぐエレベーターだった。

「なんか見たことある景色」

「そりゃそうさ」一階下で止まる。

昨日来た事務所だった。

「僕の家は事務所の上だからね」

愕然としているショウを促してノックしてからがちゃんとドアを開けた。


「おはよう!蒼海、一緒に昼食べに行こう」

「お早うございます。奢りならいいですよ。あれ、ショウ君、またご飯たかりに来たの?」

「そんなつもりはないです。無理矢理誘われたんです」

「まあ、引きこもりだもんね。暇だろうし、僕と違って」蒼海は恨めしそうに言う。

泊まったのバレないかな?ドキドキしてると

「昨夜ショウは酔っ払って僕の所に泊まってて、今日起きたの11時過ぎだって」

とナルシに思い切りバラされた。

「ナルシ〜、僕の工作をよくも一瞬でぶち壊したな」ドキドキを返せ。

「何その自由な生活!何がどうなってそんな事に」蒼海はキッとナルシを睨む。

「さ、早く行こう!一杯になってしまう」

ナルシは全てを無視する事にしたようだ。颯人じゃないが、舌打ちしそうになった。


そして、3人で並んで牛丼を食べていた。2件くらい行ったが一杯だった。時間が無い蒼海の為に牛丼になった。


「全部食べるんだよ、吐いたら駄目だから」

「普通に食べれるて。全部は無理やけどな。普通にしてて吐いた事あらへん」

ナルシを挟んで左右に青海とショウで座っている。顔も向けず不機嫌に言った。


「そんで、話って何?」

「食べ終わって事務所でね」

「また、あそこに戻るんか」ウンザリするショウと違って弾んだ声で蒼海が言う。

「あ、もしかして、話って」

「まあ、期待してて」

「何通じ合ってんねん」

蒼海は残りをすごい速さで平らげてお茶を飲み干した。

「そりゃ、付き合い長いからね!元気出てきた!」


ショウは少なめにしたがそれでも全部食べられず、ナルシから小言を言われたが聞き流した。


「ナルシ、ショウ君のオカンになったみたい」蒼海が面白そうに言った。

「絶対いらん」ショウは顔を顰めた。





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