エピローグ

 俺は、双眼鏡や椅子を片付け始める。


「まるで、夢のようだったな。もしかして本当に夢だったのかも――」

「それはないわ。現実に起きたことよ」


 誰もいないはずの後ろから、声をかけられ、驚いて、俺は振り返る。

 そこには、さっき帰って行ったはずのアルテが立っていた。


「びっくりさせるなよ。どうした、忘れ物か?」

「それが、困ったことになったの。アキトの家に泊めてもらえない?」


 アルテの突然の申し入れに、俺は驚いたが、嬉しくてたまらなかった。

 だが、そんなことは、おくびにも出さずに、平静を装い返事を返した。


「それは構わないが、どうした?」

「実は、ゲートって、二点間を一瞬で移動できる、と思っていたんだけど……」


 アルテは、両手の人差し指を立てて俺に説明しながら、困り果てた顔をしている。


「違ったのか?」

「二点間を光速で移動できる、が、正解だったみたい」


「光速で?」

「つまり、レムリアに戻るのに百年かかるってことなのよ。はぁー」


 説明を終えて、アルテは肩を落とし、大きくため息をついた。


「百年……」

「お願いします。この世界で自活できるようになるまで、一緒に住まわせてください」


 アルテが両手を合わせて、小首を傾げて上目づかいに俺を見上げてくる。

 くッ! この、あざとい奴め。


「わかったよ。自活できるまでといわず、一生でも俺は構わないぞ」

「それじゃあまるで、プロポーズみたいよ?」


「そ、そうだよ!」

「あれー。さすが勇者様、手が早いわね。では、考えておきますね」


 思い切って言ってみたが、それは、保留ということなのだろうか?

 振られてないだけマシか。


 こうして、我が家には金髪美女の同居人が増えることになった。


【完】



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「身代わり侍女の成り代わり」

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地球召喚 【短編】星空の代わりに浮遊大陸と金髪美人が現れた。 なつきコイン @NaCO-kaku

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