身代わり侍女の成り代わり

なつきコイン

プロローグ

「ローズ! 今この時、この場所をもって、お前との婚約を破棄する!!」


「なにが、婚約を破棄する、ですか、破棄したいのはこっちです。大体、魔眼持ちが欲しいからと、無理矢理婚約者にしたのは、王家の方ではないですか!」


「チッ! お前が、リリーを虐めていたことは、調査済みだ。何か申し開きがあるなら言ってみろ!」


「その小娘を虐めたことが何か問題でも? そもそも、虐められたくないなら、私の目の前に姿を見せなければいいのですわ」


「言うに事欠いて、何だ、その言い草は! だいたい、お前は、その魔眼と同じように、心の冷たい女だからな」


「心が冷たいから、なんだというのです!」


「俺は、お前との冷え切った結婚生活でなく、ここにいるリリーと温かな家庭を築くと決めたのだ。お前がいると、王宮が寒くなる。さっさと出て行け!」


「こんな茶番劇付き合いきれませんわ! 殿下のこと、まったく好きではありませんが、私と婚約破棄して、その娘と結婚されるとなると、私のプライドが許せませんわ! ――そうです、この際、二人そろって凍り付いてしまえばいいのですわw」


 侍女の私が、のんびり迎えの馬車で寛いでいた時、舞踏会の会場では修羅場が繰り広げられ、ローズお嬢様が氷雪の魔眼を暴発させたことのより、正に地獄絵図となっていた。


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