第18話 クリップでスマイル

Side:ショウセイ

 紙の需要が生まれたので、スキルでクリップを物色。

 色んなのがあるんだな。

 その中に懐かしい物を発見。


 それは、プラスチックで出来たゼムクリップだ。

 140円で70個ぐらい入っている至って普通のクリップだ。


 何が懐かしいかと言えば、子供の頃にこれでバッタを作ったのだ。

 作り方は簡単。

 先端の部分を切り取って、足を作る。

 クリップを二つ組み合わせても良いし、一つでもいいが、足を曲げてバネのようにすると。

 少し押して離すとぴょんと飛ぶ。


 俺達はクリップバッタと呼んでいた。

 1袋あれば孤児院の子供、全員に行き渡る。

 よし、買おう。


「みんな、集まって」


 孤児院の子供を集めた。


「なになに?」

「ここを切って折り曲げて、テーブルの上に置く。そして押して離すと」


 クリップバッタがノミの様に跳ねた。


「凄い、やらして」

「俺が先だよ」

「私にも頂戴」


「喧嘩しなくても人数分あるよ」


 子供達からスマイル100円をたんまり頂いた。

 こんな物でも稼げるんだな。


 子供達は飛距離を競争し始めた。


「俺の方が絶対遠くに跳んだ」

「いや俺のだ」


「喧嘩するなよ。仲良くな」


 100円ショップのメジャーを出してやる。


「これ、数字が読めない」

「ああそうか、アラビア数字だもんな」

「私、読めるよ。これって勇者数字でしょ。勇者様が使っていたっていう」


 やばい、俺が勇者だと疑われる。

 いや、今更か。

 今まで出した商品のパッケージに数字が沢山、印字してあるものな。


「勇者にあやかって商品を作っているんだよ」

「きっと勇者教の人が作ったのね」


 ふう、俺の事がばれずに済んだ。


Side:孤児院の男の子


 孤児院でショウセイが俺達を集め始めた。

 何が始まるんだろう。

 美味しい物かな。

 勉強かな。


 ショウセイが青い色の変な細工物をさらに細工する。

 虫みたいなのが出来上がり、背中を押すとぴょんと跳んだ。

 うお、面白れぇ。


 くれるのか。

 俺は孤児院の中でこのクリップバッタという物で遊びまくった。


 街に行って自慢したいな。

 子供達を遊び場で探す。

 居た居た。


「おい、凄い物を見せてやる。ここをこうやって」

「うおー、跳んだ」

「俺にも貸して」


 街の子供達と一緒に遊ぶ。

 そして。


 ポキっとクリップバッタの足が折れた。


「うわっ、足が折れた」

「俺のせいじゃないぞ。寿命だよ。寿命」

「俺のクリップバッタを返して」


「知ーらないっと」

「あっ」


 街の子供達が逃げて行く。

 ぐすん、ちくしょう。


 顔見知りの職人の所に行きにかわを少し分けてもらう。

 クリップバッタの折れた足に付けたけど、グラグラしてる。

 跳べよ。

 願いを込めてクリップバッタの背中を押す。

 クリップバッタは跳ばない。


 うわーん。


 孤児院に泣いて帰ると。


「どうした虐められたのか」


 ショウセイが声を掛けてくる。


「ううん、俺のクリップバッタの足が折れたんだ」

「なんだそんな事か。新しいのをやるからもう一回作れよ」


 そう言ってショウセイは新しいクリップをくれた。

 やった。

 2代目クリップバッタ、発進。


 そうだ。

 初代クリップバッタを孤児院の庭の隅に埋めて、握り拳ほどの墓石を立てた。

 今までありがとう。

 君の雄姿は忘れない。


 拝んでいるとショウセイがやってきた。


「何だ、壊れたクリップバッタの墓を作っていたのか」

「うん」

「日本人が無くしかけている心だな。物を大切に思うのはいい事だ」


 ショウセイはそうしみじみとした感じで言った。

 変なショウセイ。

――――――――――――――――――――――――

 この物語はリメイクします。

 未完です。

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