第9話 着痩せするタイプなんです
烏丸さんに言われて向かった先は居酒屋【
いつも飲む時はこの店なんだけど、最近は来てなかったな。まぁ、俺が締切でくたばってたからなんだけど。
「いらっしゃいませぇ〜にゃ!」
……にゃ? てか店員なんで猫耳つけてんの? 店名からか? 前も付けてたっけ? いや、付けてないな。まぁ、多分なんかのフェアかなんかなんだろ。
「烏丸の名前で席を取ってあると思うんですけど」
店員にそう告げると、すぐに個室に案内してくれた。中に入ると、そこには空のグラスに囲まれた酔っ払い烏丸さんの姿。あかん。これはあかん。
来るんじゃなかった。
「あ〜! 空園せんせぇだぁ〜!もう! 遅いですよぉ〜♪」
「だーもうっ! グラスもったまんまで立たないで下さい! 中身がこぼれるこぼれる!」
あっれー? おかしいな。結構急いで来たのになんでこの人こんなに酔ってんだ? 電話の時は普通だったのに。余程嫌なことでもあって飲みまくったとか? もしそうだとすると相当面倒くさくなるな……。
「で、いきなり呼びつけてどうしたんですか?」
「お金が足りないんです」
「俺、帰るわ」
「なーんてうっそー!」
こ、コノヤロウ……。
「そ、それでホントはなんなんですか!?」
「まぁ待ってくださいよ。そんなに見られたら照れちゃいます。ってあれ? どこ見てるんですか? もしかして胸元見てました? しょうがないですねぇ〜。空園先生はおっぱい好きですもんね。ヒロインもサブヒロインも脇役も巨乳ばかりですし。わかりました。もう二個だけボタン外してあげます。私、こう見えて着痩せするタイプなのでなかなか大きいんですよ」
「見てないですからね!? ちょっとは見たけどそこまで注視してないですからね!? っていうかもう二個ってそんなに外したらガッツリ見えちゃうでしょうが! やめなさい!」
あーもうほら! 下着見えてるから……お? 大人っぽい雰囲気のわりに可愛いブラ付けてんだ。これはなかなか好きなギャップ──じゃなくって!
「ですよね。こんなすぐ振られる女のおっぱいなんて見たくないですよね……ぐす……」
め、めんどくせぇ……。ここはとりあえず機嫌取って早く要件を言ってもらおう。
「いやぁ〜そんなことないですよぉ〜。烏丸さんはホントに魅力的ですから〜。いやぁ〜本当は見たかったなぁ〜烏丸さんの素敵な胸。残念だなぁ〜」
「じゃあはい」
そう言って色気もムードもなくブラウスを上に捲って胸を見せてくる。
うわ、ホントにでっか。先輩くらいあるんじゃないのか? いや、それはまず置いといて──
「やめろや!」
「ひうっ! こわいぃぃ……」
「怖いじゃなくて! いったい何なんですか!? 今日はいつもより面倒くさい!」
「面倒くさいっていわれたぁ〜〜!」
「まず胸をしまいなさい!」
「はい」
「正座!」
「はい」
「何がありましたか?」
「アニメ化が決まりました」
「…………はい?」
え、待って。アニメ化? コミカライズが決まったばかりなのに? 嘘でしょ? まじで?
「私の担当してる作品のアニメ化が決まったんですよぉぉぉぉぉ!!」
「まぁぁぁじでぇぇぇぇ!?」
「はいっ! 空園先生以外に担当していたファンタジー作品がアニメするんですっ!」
「ちくしょォォォォォォ!!!」
俺のじゃないんかーい!
ムカついた。俺も飲む。店員呼び出しボタンポチッとな。
「はい、追加注文ですね……って、え?」
「とりあえず生ビールを大グラスで。あと漬物盛り合わせとチーズ揚げを一つお願いしま…………へ?」
メニューから目を離して店員を見る。そして固まる。
なぜならそこにいたのは──
「せ、先輩?」
「久我君……。へぇ〜……そっか。んんっ! お客様、店内でふしだらな行為はお控えくださいますようお願いしますね」
「へ? そんなことなにも──」
「あつぅ〜い」
「ほら」
「はぁっ!?」
烏丸さぁぁぁぁん!! なんでボタン外してんだぁぁぁぁぁ!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます