第8話 初めての染髪
『と、言うわけなんだ。助けて恋愛マスター』
『まずその呼び方やめろ』
そして始まる勉強タイム。そこで決まったのは、服装はなるべく普段の格好からかけ離れないもの。先が尖った靴を履かないこと。カバンも服のデザインを殺さないデザインの物にすること。
髪に関しては、 俺の予想の斜め上の事を言われた。
『……え? 染めんの?』
『おう。染めろ。だけどガッツリはダメだ。あくまで光が当たれば変わって見えるくらいにな。変に染めると気合い入れすぎ感で引かれるかもしれないからな。ちょっと気付くかも? ってくらいでいい。お前ならグリーンブラックかな』
『俺、染めたことないんだけど?』
『知るか。いいか? 髪を染めてそれに気付いてくれた時、俺の経験上三割ほどの確立で「あ、髪染めたんだー!」って言って髪を触ってくれるんだぞ?』
『俺、染めるわ』
『おうおう、単純だなぁコラ』
そして電話が終わってから俺はすぐに美容院を調べてネットで予約。時間は明日の夕方。
いざ、初めての染髪!
◇◇◇
「お、おぉ……ホントに染まっている……」
翌日。仕事を終えてすぐに予約していた美容院に行くと髪を切ると同時に染めた。
その後小腹が空いたから近くのファーストフード店に行き、トイレの鏡で自分の髪をしっかり見てみた。
確かにパッと見ではわかんないけど、ライトの当たり方次第で深い緑っぽく見える。
「これは……なかなかイケてるのでは? って自分で言ってどうすんだか」
俺はココに他の客が来て恥ずかしい姿を見られないうちに店内に戻ると、バーガーのセットを頼んで適当な席に座るとスマホを手に持つ。
まずはポテトから。冷めると美味くないからな。
そしてSNSの作家アカウントを開く。
「さて、俺の本の売れ行きはどんな感じなのかね」
そしてエゴサ。とにかくエゴサ。
時々凹む感想やイラッとする感想もあるけどそれは仕方がない。万人受けなんて書けないしな。
「ん〜? こうして見てると売れてるような気もするけど……どうなんだ? 重版出来たらいいんだけどな。出来なかったら多分次で最終巻になりそうだし。まだ書きたいことあるんだよなぁ……はぁ」
ため息をつきながら一度スマホを置き、空になったポテトの、入れ物を潰すと今度はハンバーガーを手に取る。そして食べようとした時だ。
〜〜〜〜♪
突然の電話。相手は担当さん。俺は食べようとしたハンバーガーを一度トレーの上に置くと電話に出る。
「はい」
『もしもし! 空園先生!』
「はい。どうしました?」
『いま、どこにいますか!? いつも通り一人ですか? やっぱり一人ですよね!?』
おいコラ。失礼だなコラ。その通りだけども。
「えぇもちろん。仕事からの帰り道にあるファーストフード店で一人で飯食ってますけど何か?」
『なら今から以前一緒に行った居酒屋さんに来てください。あの個室があるところです』
「え、今からですか?」
『今からです! 私はもう着いてますから』
時計を見るとだいたい七時。明日は朝から直接外回りで出社の必要はないから、行けないこともないな。
「わかりました。急いでいきます」
俺はハンバーガーを食べずに鞄に入れるとすぐに店を出る。なんだろ? 妙に焦ってるような感じだったけど……。
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