第11話 既読スルーはダ〜メ
と、思ってた俺が馬鹿でした。
「もっと色んなシーンをワタシをモデルにして描きますね! だからまずはスク水買わないと。後は童貞を殺すセーターと……うん! 創作意欲湧いてきた!」
死にたい。この子俺の事好きなんじゃね? どうすっかな〜? って思ってた俺を消したい。
そりゃそうだよな。そんなわけないよな。こんなスタイル良くて可愛い金髪美少女がさ? 俺を好きになるわけないんだ。知ってたんだ。知ってたけど期待しちゃったんだ。
くそぉ……。
「じゃあとりあえずこれで担当さんに送ってみますね!」
「いっ!? 担当さんにまだ見せてなかったの!?」
「いやぁ〜、ホントはそっち先に送らないといけなかったんですけどね? 早く空園先生に見せたくてみせちゃいました」
見せちゃいましたじゃないんですけど!?
「だから、先に見せたのは内緒にしてくださいね?」
両手を合わせながら少し前屈みというなかなかあざとい格好でそんな事を言われたら……
「任せてください。口は硬いほうなので」
そう言うしかないじゃないの。可愛いは正義なんだもの。
「良かった♪」
「じゃあ僕はそろそろ帰りますね」
「え、帰るんですか?」
「帰りますけど?」
メンタルがもちそうにないので。
「まだ早く──もないですね。外暗くなっちゃったし」
「ですね。僕も帰って書きたくなってきましたし。リア先生のイラストを見て、またいろんなアイデアも浮かんできたんで」
「わかりました。今日は無理言って着いてきてもらってありがとうございました」
「いえ、こちらこそ素晴らしいイラストを見れて最高でした」
あと、素晴らしい感触も。
「気をつけて帰ってくださ〜い」
「はい。では、お邪魔しました」
「あっ!」
「はい?」
部屋から出ようとしたときに聞こえた突然の声に振り返る。
すると目の前に来た繭梨先生が、突然俺の腕に抱きついてきた。あ、やわらかい……
「また来てくださいね。今度は……もっとゆっくり」
「そうですね。今度はお茶菓子でも持ってきますよ」
聞いたか? これがThe・社交辞令だ。きっともう呼ばれる事はないだろう。すぐに隠したけど靴下にちょっと穴開いてたし。やらかした。
「ほんとですか? やったぁ♪ じゃあ次はいつにします? そうだ! 一話のネームが出来たら連絡しますね? だからLinksのID交換しましょう!」
「え? あ、はい」
ちなみにLinks〘リンクス〙というのはメッセージアプリのこと。通話も無料で出来て、相手がメッセージを見たかどうかがわかる既読通知機能付き。
先輩に送って既読スルーされた時は泣いた。
で、そのIDを繭梨先生と交換したんだが、どうせ連絡なんて来ないだろう。これもきっと社交辞令社交辞令。
「ワタシ、送りますからね? 既読スルーしないでくださいよ? スルーされたら拗ねちゃいますからね?」
そう言いながら俺を見上げて頬をぷぅと膨らませる繭梨先生。
社交辞令……だよな?
◇◇◇
「いやぁ〜、しかしまぁなんて小悪魔な子なんだ。あれが魔性っていうんだろうなぁ……」
帰り道、誰に言うでもなく一人呟く。
いや、違うな。これは自分に言ってる。決して勘違いしないように言い聞かせないとふらっとその気になっちゃいそう。
自分でラブコメ書いててアレなんだけど、他のヒロインからのアタックを主人公よく我慢してるよな。凄いわ。
よし、こんな時は先輩となんでもない日常的な会話をしよう。『今日は寒いですね』から話題を広げるのだ……ん? あれ? 先輩からなんかメッセージ来てる。それも二件。なんだろ?
『なんかね? バイト先でコスプレして接客するんだって。私、猫になったんだけど……どうかニャ?』
このメッセージと共に送られてきた写真に写っているのは、猫耳を付けた先輩。
「ふぁーーっ!?」
可愛すぎて変な声でたわ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます