第10話 Dカップ

「ま、またまたー! 繭梨先生可愛いんですからそんなわけないじゃないですかぁー」


 俺はそう言いながらさりげなく体を前に倒して彼女と触れてる部分を離そうとする。

 だけどマウスに伸ばした手とは逆の手を俺の肩に置いていた為、そのままついてきて離れない。

 むしろ動いたせいでさっきよりも押し付けられている。二つのお山がむにゅんだ。


「わ、いきなり動かないでくださいよ。それに繭梨じゃなくてリアって呼んでくださいって行ったじゃないですか」

「あ、すいません、リア先生」

「いいですよ〜。そ・れ・よ・り、さっき可愛いって言いましたよね? ワタシ、空園先生から見て可愛いですか?」

「いや、僕からというか、誰が見ても可愛いって思うと思いますよ?」

「へへ〜♪ やったぁ!」


 何だこの天使。くっそ可愛いんだが? いや、でも待て。俺には先輩がいるじゃないか。思い出せ。先輩は小さくて可愛いってことを。そしてその低身長とはアンバランスなあの胸の大きさ。昔、同じところでバイトしてる時に弾みで触れた時のあの柔らかさを!

 ……よし、先輩は最高! これで繭梨先生に変な気は起こさない。


「それで、これがコミカライズ版のキャラデザですか?」

「はい。漫画として描くのと表紙として描くのではやっぱり違いが出るので見てもらいたくて」

「そうは言っても……相変わらずのクオリティの高さで僕から言うことは何も無いですね。最高です」


 これはマジ。ヤバい。これは売れる。そんな気がする。さすが52万人フォロワー絵師様。ハンパない。


「ところで……このヒロインのバストサイズってDでいいんでしたよね?」

「そうですね。最初はHとかにしてたんですけど、担当さんにあまり大きすぎるのもアレだって言われたので」

「そうなんですか。Dだとワタシと同じなので描きやすかったんですよね〜」


 唐突なカミングアウトやめて。そして描きやすいとは? まさか自分の胸を参考に──ってそんな事聞けるかぁ! とりあえず当たり障りのない適当な返事でもしておこう。


「そ、そうなんですかー」

「ですよ〜。同じDカップだから自分でポーズ取ったりして、それを撮って参考にしたんです。同じDカップだから」


 したんかい。そんなの言わなくていいから。そして二回言わなくていいから。想像しちゃうから。だからやめて。俺にどうしろと?


「最初はHカップ設定だったってことは、空園先生ってホントに胸大きい人が好きなんですね」

「大好きですね」


 躊躇なく答える。俺の性癖はこの前の食事の時にほとんど暴露したから恐れるものは何も無い。


「だけど……こんなに大きいのってやっぱり二次元だからですよね。現実だとそうはいないですもん」

「そうですよね。それはわかってはいるんですよ。だから巨乳のイラストに目を引かれちゃうんですよね」

「ちなみに現実だと、Dって結構大きい方だと思いません?」

「思います」


 あ、やべ。つい即答しちまった。


「っていうことは……ワタシの胸も大きい方にはいるんですよね? つまり、空園先生の好みの大きさに当てはまるんじゃないですか?」

「……で、ですね……」


 さ、誘われてる……のか? コレ、誘われてるんだよな? 据え膳食わぬは男の恥とは言うけど、これは流石に先輩に悪いような……。って別に付き合ってないけどな! いや、でも……


「それなら……」

「な、なんですか?」


 なんだ!? なにがそれなら……なんだよ! もしかして告白とかされちゃうのか!? まだ会って二回目なのに! 今まで来たことがないモテ期がとうとう俺にも来たのか!?

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