第1章 覚醒~脱出 5 実験
「そこを動かず、静かに横になってろ!」
虹色に暗く光る台座の上に引きずり上げられた私達は、台座に幾つもある窪みに放り込まれました。
「セラちゃん!」
「お兄!」
マリやネネちゃんが不安で声を上げています。
「これは飛行石なのかな?でもこんな色もこんなに大きいのも聞いたことも無いよ。」
ルイ兄さんは窪みから身を起こし、驚く様に廻りを見ています。スゥお姉さんもこの台座が気になっている様ですね。
窪みは大きな子供が横になれる位の大きさで、周囲の台座には薄く光る線が無数に走っています。
真ん中に放り込まれた私の周囲にも数多く光っています。
配線?いや回路でしょうか。
体は痛みに悲鳴を上げていますし、これからどう成るのかという不安で胸はドキドキしているのですけど、心はこの不思議さに惹き付けられてもいますね。
「開始しろ!」
声と共に大勢の人、つまり兵士達が動き出すどよめきが広間に響き渡りました。
ゴロゴロと重い台車を動かす様な音がします。
台座が載った太い柱の下や周りには、幾つもの台車に載った巨大な塊みたいな物が有ったと思いますけど、それを動かしているのでしょうか?
同時に暗かった台座の光が少しずつ明るさを増し、薄かった回路の様な線も輝き始めました。
「ウヮッ・・・」
「キャァ・・・」
みんなの悲鳴を聞きながら私も未知の感覚に飲み込まれました。
知らない様で何処か知っている様な感覚ですね。
心が外に繋がって拡がっている様な、外から心に圧力が掛かっている様な不思議な感覚ですね。
心の中で思いを巡らせるのではなく、拡がる外に心の手を伸ばして行ける様な感覚でしょうか。
何とは無く感覚が掴めて来ましたね。
外の世界から押し寄せる波を、押し返し切り裂いて心を外に拡げます。
これは全く未知の感覚ですね。
でも、外の世界に心が拡げられますから、何があるのか探って行けますね。
別の心に触れた感じですね。
これはマリかな?
触れるとビクッと怖じ気た感じでしたが、少しすると私だと判った様で、マリの混乱した感情が伝わって来ましたね。
言葉は伝わらない様ですが、大丈夫だから安心してと感情を込めて見ると、マリの感情も落ち着いてきた様ですね。
あの光る回路が心を繋げているのでしょうか?
試してみましょう。
ミルお姉さんに繋がるでしょうか?
あ、繋がりましたね。
ちょっと混乱してましたが、直ぐに私だと判って落ち着いていますね。
ただ、マリもそうでしたが心を外には拡げられない様ですね。
スゥお姉さんはどうでしょう?
さすがと言うべきか、繋がっても驚きもせず直ぐに私だと判って感情を伝えて来ましたね。
この後順にみんなの心に触れて行き全員と繋がりましたが、繋がっているのは私とだけで、みんなの間では繋がりがないですね。
心を外に拡げないと駄目なのでしょうね。
この外の世界と言うべきものは、あの虹色に光る台座なのでしょうか?
心をさらに拡げて探ってみましょう。
繋がっているみんなの心が背中を支えてくれている感じで、安心感と心強さがすごいですね。
心を拡げていると少しずつ判ってきますね。
これは飛行石、否もっと高純度の飛行結晶と言うべきでしょうか、その中なんですね。
あっ、限界ですね、意識が持ちません。
繋がっているみんなの心が慌てている様ですが・・・
・・・酷い目覚めです!
頭の痛みで覚醒し、体を動かしたら激痛で完全に目が覚めました。
「起きては駄目だよ。まだ寝ていなさい。」
低く落ち着いた声が近くから聞こえます。
痛みをこらえて声の方を向くと、生なりの服を着たおじいさんが居ました。
「お医者様ですか?」
「ああ、そんなものだよ。君は熱を出して居たんだ。体のあちこちを打って痛むだろうけど、骨は折れていないから、我慢していれば直ぐに良くなる。だから、おとなしく寝ていなさい」
「みんなは大丈夫なのですか?」
「心配しなくても良いよ。君が一番具合が悪いのだから。逆に君の仲間達の方が君を心配していた。安心したら休みなさい」
お医者様の手が優しく目を覆うように額に当てられた。
痛みはあるのだけれど、安堵した思いに再び意識が薄れました。
───────────────
遺跡の台座とは古代天空王国の遺産。台座が何の為の装置かは未だ曖昧なまま。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます