第52話 テスト期間

「よっ」

「なんだ、環か」

「なんだとはなんだ。昨日のトラックレースはどうだったんだよ」


校舎でたまたま鈴に会った環は、彼女に昨日のレース結果を尋ねた。サイクリングサークルがタンデム自転車を完成させたその日、鈴たち自転車競技部の四年生以上は、トラックレース大会に出場していた。


「大した成績じゃないから聞くな」と、むすっとして鈴が答える。

「九月のインカレには出るのか?」

「私は、クラス2じゃないから出れないよ」

「そうか」

「で、いつからタンデムの練習するんだ?」


鈴は環の言いたいことを察して質問した。九月のインカレに出ないとなると八月の予定はフリーになる。それはつまり、鈴が高専大会に出場可能になるということだった。

「なんで?」

「なんでって、私も乗るんだろ? それ以外にあるか?」

「え? 乗るの? 鈴が?」

「は? そっちが乗ってくれって頼みに来たんだろ。今も」

「そうだっけ?」

「……じゃあ、さよなら」

「うそうそ。まってまって」


去ろうとする鈴の腕を掴んで引き留めた。この前の夜の事件以来、なんとなくこうなる気がしていたのだけれど、鈴が実際に乗ってくれるというので思わず笑顔になる。


「練習は今日の放課後から。テスト期間だからコソ練になるし、テスト勉強もしないといけないから二時間だけ集中的にやる」

「分かった。私と環と、あと一人は誰?」

「立花彗だよ。この前の一年の」

「ああ、あの子が。でも左手の握力がどうのこうの言ってた気がするけど」

「そこは、ほら、道具と気持ち次第かな」


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