見える世界、暗い世界

世界ジュニアからしばらく、4月の初めに行われたシニアの世界選手権。

オリンピックの無い年は、その競技が一番大きな大会となる。


男子では神崎勇、三浦紀之、足立理一が出場。

女子では、中村初音、岸田桃音、山下めぐりが出場している。


山下めぐりは昨年の世界ジュニアで優勝して今年シニアデビューし、一気に駆け上がっている。

元ペア日本代表だった杉林圭史と水野多英が開いた比較的新しいクラブの一番弟子で、ジュニアの頃から今シーズン一度も試合で転倒をしていない安定感と、4分間激しい動きをするプログラムの後でも息切れをあまりしない体力を誇る選手だと評判だ。


そして彼女以外の五人は全員、昨年のバンクーバーオリンピックの代表選手だった。


そんな人達をテレビで見ているわけだが。


実は今回の試合、リリィ達家族は現地で見るつもりでいた。

本来なら日本で開催されていたからだ。


しかし、ほんの数週間前...世界ジュニア選手権が終わってすぐの日。

思い出すのも恐ろしい大震災に日本は襲われた。


時期的にもう少し遅かったら柚樹は日本に帰って来れなくなっていただろう。


中止になるんじゃないかと言われていたが、

代替としてロシアのモスクワで開催された。


だから例年は3月末に行われる大会がこの時期に行われた。


テレビの向こうの景色は照明のせいかもしれないがどこか暗く感じた。


しかし、毎年世界選手権を見る度に思う事は同じだ。


そこで滑るのはどんな気持ちなんだろう。

そこに辿り着くまでにどれだけやってきたんだろう。

自分はいつかそこに行けるのだろうか。


この三つを毎年考える。


今年も結局変わらずのスケーターだった。なんともお先真っ暗な気持ちだ。

来年は最後のノービスだ。どうにか進展が欲しいと願った。

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