第22話

「ご主人様、早速向かいますか?」


 ユナが小首を傾げ、大きな藍色の瞳をこちらに向けながら俺にそう問いかける。


「ああ。すぐにでも行くよ」

「そう言うと思いまして、ご主人様が持ってきた任務服をバッジに登録しておりました」

「っ……!? いつのまにか俺のバッジを……」


 ユナの手には俺が胸ポケっとあたりにつけてあったはずのバッジがあった。

 恐ろしい子ッ!


「では、どうぞ。任務服の装着の仕方はわかりますか?」

「左右をぐって押し込めばいいんだよな?」

「はい」


 すると、俺の服は変化しだし、任務時の服に変化する。この服は、あの時伊集院さんに勧められた黒色のロングコートだ。

 変化したのは服だけではなく、腰に魔剣が携わっていた。ちなみにこの魔剣、不思議な能力があり、これに触れたり斬られるまでは姿が見えないらしい。


「似合っております、ご主人様」

「もっと感情込めて言ってほしいなぁ……」

「注文の多いご主人様ですね」

「注文の多い料理店みたいに言うな」


 さて、と。それじゃあ早速第一の試験を受けるとするか。

 ドアノブに手をかけ、指定された場所に向かおうとした瞬間――


「あ……ご主人様!」

「えっ!?」


 ガシッとユナに片手を握られる。無機質で、冷たいはず。だのに、ユナの手からは温もりが感じられた。


「あの、私はご主人様をずっと待っております。ですから――頑張ってくださいねっ」

「ッ! ……あ、ありがとう」


 ユナがほんのりと笑みを浮かべていたのだ。その笑顔は天使といっても過言では無いというくらい可愛らしかった。

 普段が無表情だったからこんなにドキッときたのかな……。


「じゃあ――行ってきます」

「行ってらっしゃいませ」



###



「ん〜、この馬鹿でかい倉庫みたいなところが目的地か」


 バッジに送られた住所まで行こうとしたらナビが開始した。それ通りに向かうと目的地に到着した。

 ついた先は大きい倉庫で、中からはガンガン、という騒音が聞こえてくる。


「「よし、行くか」」


 ――ん? なんか声が重なったような……。

 声がした方を向くと、そこには不審者がいた。いや、不審者のような人がいた。

 黒と赤のパーカーを着てフードを深く被り、マスクとサングラスをかけている。そして手袋まではめていて、肌は一切見えなかった。

 この人もこの倉庫の中に行こうとしていたので、話を聞かざるを得ない。


「……あの、誰ですか?」

「貴様こそ誰だ。俺は人間に相手をしている程暇では無い。立ち去れ」

「……いや、俺は今からこの中に入るんだけど」

「俺もここに入るのだが」

「「…………」」


 俺と謎の不審者の間に沈黙が生まれる。

 ……もしかして、総隊長が言ってた〝支援〟ってこの人のことだったのか? 一緒に戦うんだったら仲良くなっておきたいな。


「あの、もしかして上からの命令でここにきた?」

「ッ!? 何故それを……いや、貴様が協力者という奴か?」

「多分、そうだ。俺の組織名コードネーム はレイニィ。そっちは?」

「こーどねーむ……? よくわからないが、俺の名は――プレセデント・ウベルトだ」

「長いな……。〝レント〟って略して読んでもいいか?」

「好きにしろ。さっさと行こう、足引っ張るなよ」


 スタスタと歩みを進め、倉庫の中に入るレント。俺も後を追って、真っ暗な倉庫の中中に入る。


 ――バタンッ!


 俺たち二人が入ると同時に、扉が音を立てて閉じた。


「レント。俺たち歓迎されているみたいだな」

「……そのようだな」


 暗転している倉庫内に、無数の赤い光が輝き、蠢いている。

 俺が光系統の魔術を発動させ、周囲一帯を確認する。するとそこには、何十機もの鉛色のボディを持ったロボたちがいた。


「人、虫、蛇……あれは熊か?」

「そんなもの確認するな、人間。さっさと片付けるぞ」

「はいはい。んじゃ、行きますか!」


 剣を鞘から抜き、腰を低くする。

 そして、戦いの火蓋は切って落とされた。

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Re:Vive Destroyer《リバイブ・デストロイヤー》 〜最強破壊神、特殊能力が満ちた地球に逆転生する〜 海夏世もみじ(カエデウマ) @Fut1

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