少年 side エイベル

応接室から出て書庫へ向かう。俺は本が好きだ。あの子はまだ書庫にいるらしい。あの子に対する疑念が完全に晴れた訳ではない。悪い子では無さそうだが、権力目当てにリーガルト家に近づく者は多いのだ。ラインハルト様も俺達が信用しきれて無いことを察して話す機会を与えてくださったのだろう。そう考えながら書庫の扉を開けると、机に向かって本を読むあの子がいた。読んでいるのは『洸国における魔法理論』。大人でも読むのを躊躇うような哲学書だ。何とも難しい本を読んでいるものだと思いながら少年に近づき、向かい側の椅子に座る。すると少年は顔を上げ、此方を向いた。この少年は何を話してくれるのだろうか。少し楽しみにしながら、少年と向き合い、視線を合わせた。

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