エイベルさん

どれほどの時間が経っただろうか。次第に心も落ち着いてきて、普通に本に没頭することができた。

読んでいた本を閉じて、新しい本を探すために本棚の通路に入る。ざっと一通り見て新しく魔法式の図鑑を手に取り、机に戻る。


「それにしても、あのおふたりはこわかったなぁ。」


考える余裕もできたので、改めてエイベル様とアラステア様のことを思い出す。お2人とも見目麗しく、所作も綺麗だった。けれど、最初のお2人は人を見定めるような目をしていた。それも、途中で優しいものに変わったけれど。考えに浸っていると、気配が近づいて来るのを感じた。恐らくエイベル様だ。彼はきっと、僕のことを認めてない。少し怖いけど書庫に向かってくるみたいだし、避けるのもおかしいだろう。嫌われないといいけれど………

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