おさがり
「ところで……その服、寒くないかい?」
「??」
そういえば少しスースーする。当たり前になりすぎて寒いという感覚も忘れてた。今の僕の格好は、白の大きなシャツ1枚を着ているだけの季節感が全くないものだ。
「この季節だし、着替えたほうがいいと思うんだが、ヴィーとアルのおさがりでもいいかい?」
兄様達のおさがり……
「おさがり、が、いい。」
「ふふ。じゃあこれに着替えてきてくれる?もう夜になるし、ついでにお風呂も入りましょうか。ヴィー、お願いね。」
「はい。行こっか、ルーク。」
そう言ってヴィー兄様が手を繋いでくれる。おさがり楽しみだな。兄様達の気配は安心するし、兄様達のお洋服ならきっと離れられたときの恐怖心も減るはず。
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脱衣所に着いて、服を脱がされる。2人でお風呂の中に入ると、お風呂独特のもわっとした熱気がきた。
「ルーク、髪洗ってあげるからこっちおいで。」
ヴィー兄様に呼ばれてシャワーの前に置いてある椅子に座る。
「お湯かけるよ。」
頭に温かさを感じて、わしゃわしゃと洗われる。その手が心地よくて、僕は気づいたら眠ってた。
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「………ク。ルーク、起きて。」
ヴィー兄様の声が聞こえて目を開けると、既にお風呂を出た後だった。自分を見るとモコモコのゆったりとした服を着ていた。
「これ、僕が着てたパジャマだよ。モコモコしてるから、凄く暖かいの。もうご飯の時間だし、食堂に行こうか。みんなもそこにいると思うし。寝起きに歩くと危ないから、抱き上げるね。」
身体が浮き上がり、ヴィー兄様の腕の中に抱えられた。
「にぃさま、僕、お腹、空いて、ない、よ?」
「お腹空いてなくてもちょっとは食べないと駄目だよ。エドさんに言われたでしょ?」
そう言われても、空いてないのだから仕方ない。でも、早く元気になってみんなの役に立ちたいし、できるだけ頑張って食べないと。食べ切れるといいな。
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食堂に着くと、みんなが服を褒めてくれる。今回もヴィー兄様の隣におろされて、食事が始まる。前回よりも量が少なくなっていて、ちゃんと食べ切る事ができた。食べ終わると、エド先生に薬の説明をされる。
「薬は錠剤が2つだよ。声が出しにくいみたいだから、もっと楽に声を出せるようになるのと、身体を正常な状態に戻すための薬。粒は小さめだけど…飲める?」
聞かれるけど、僕は錠剤を飲んだことがない。飲み方が分かんないしなんか怖いし……飲まなきゃ駄目かな。
薬をじっと見ていると、みんなが心配そうにこちらを見てくる。
「……のみ、かた、わか、ない。」
僕がそう呟くと、エド先生が僕のところへ来てくれる。
「最初は怖いだろうから私が飲ませてあげるよ。ほら、口開けて。」
「ぁ、」
「はい、薬と水入れるよ。ごっくんして。」
「んく。」
「口開けて?」
「ぁ、」
「うん。ちゃんと飲めたね。これからも飲める?」
思ったより怖くなかった。でも自分でやるのは怖いかも。みんなが手伝ってくれるかな。
「じぶ、ん、で、?」
「いや、この家にいる人なら頼めば手伝ってくれるから大丈夫。手伝いがあれば飲める?」
僕が頷くとみんながほっとしたように息をつく。
「じゃあ、明日から昼と夜に食事と一緒にこの薬を飲んでね。体調が落ち着いてきたらだんだん量を減らしていって、最後には飲まなくてもいいようになるよ。薬の副作用で眠くなると思うけど、そういう時は我慢せずに寝てね。我慢すると身体によくないから。」
「は、い。」
エド先生がいろいろと話してくれるけど、睡魔が襲ってきてまともに頭に入ってこない。
「思ったより副作用の効果がききすぎちゃったかな?明日からは少し弱めのものにしようか。今日はもう寝るといいよ。」
エド先生に抱きかかえられ、 一定のリズムで背中をトントンされると落ち着き、意識を手放した。
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