呼び方

「さて、話が纏まったことだし、君についていろいろと決めていこうか。まずは、君の名前から。」


「……名前」


そういえばそんな話してたな。


「そう、名前。昨日、私達で考えたんだよ。君の名前はルクライア。童話にでてくる天使達からとった名前だよ。私達はルークって呼ぶよ。どうかな?」


胸の辺りが凄くぽかぽかする。なくてもいいと思ってたけど、この人達が考えてくれたものなら嬉しいな。


「嬉、しい。凄く。」


「それならよかった。」


ラインハルトさんが微笑みながら頭を撫でてくれる。その手を甘受していると、ヴィーさんが腕を解いて僕の目の前に座った。そして、顔を覗き込まれる。


「ねぇ、ルーク。僕は今日からルークの兄になった訳だし、兄様って呼んで欲しいんだけど?」


急な要求に顔が固まる。心の中で呼ぶ分にはいいけど、口に出すのは緊張する。名前を呼ぶだけでも恥ずかしいのに……


「だめなの?」


「うぅぅ……」


「ほらルーク。僕はルークの、に・い・さ・ま、だよ。」


「………ヴィー……………………さん。」


「に・い・さ・ま、でしょ?」


「ヴィー………にい、さま。」


もう無理!僕今絶対顔真っ赤だ。顔が熱い。今なら恥ずか死ねる。


「うん。ありがとう、ルーク。」


「うぅぅぅ……」


恥ずかしすぎて顔が上げられない。家族なんて初めてだし、こんなの経験したことないし、、、そんなので、自然に呼べるわけないし、、、心の中で只管言い訳していると、肩に手が置かれた。顔を上げると目の前にアルフレッドさんがいる。


「俺は?」


「アルフレッド、さん?」


「違うだろ?」


「うぇ?」


「俺の略称、アルなんだけど?」


「………アル、さん?」


「ヴィー兄様と俺でなんで違うの?」


「ふぁっっ?」


まさか、アルフレッドさんも兄様と呼べと?!僕もう辛いんですけど!無理無理無理……。うっっ……アルフレッドさんの視線が痛い。めっちゃ見てくる……。


「アル……にい、さま?」


「おお。ありがと、ルーク。」


心臓が辛いです。穴があったら入りたい……


「ルーク、その調子で私達のことも呼んで欲しいです。可愛い弟に姉様呼びされたいです。もちろん、略称でお願いします。」


ここにきてマリアーノさんとアンジェリカさんもですか……僕はもうどうにでもなれの精神でいきます。どうせ抵抗しても無駄だし………


「……マリア…ねえ、さま。…アンジェ、ねえ、さま。」


「ふふっ。嬉しいです。ありがとうございます。」


「これは…癒されますね。」


恥ずかしすぎる。ホントに心が死ぬ。恥ずかしさで悶える僕に、ラインハルトさんとクリスティーナさんがさらに追い討ちをかけてきた。


「私達は父様と母様だな。」


「えっ?」


「あら、お父さんとお母さんでもいいのよ?」


「うぅ、、おと、ぅさま。……おか、ぁさま。」


「「可愛いな(ですね)」」


もう限界!羞恥心に耐えきれず、膝に顔を埋める。


「やりすぎちゃったかな?」


「ごめんね。あまりにも可愛かったから。」


みんなに謝られるけど、顔がずっと熱くて顔を上げられない。少しの間蹲っていると、気配を感じ、扉の開く音が聞こえた。


「失礼するよ。……どうかしたのか?」


「ルークに呼び方を改めてもらったんだけど、恥ずかしかったのか蹲ってしまった。」


「病み上がり相手に何してんの。全く……。ルークくん、診察したいから顔を上げてくれないかな。」


僕が顔を上げると、エドワードさんがいた。また、じっとしている間になんやかんやされる。


「うん。特に問題はないね。今日から薬を飲むことになるから、食事のときにまた説明させてもらうね。」


「……は、い。」


「ところで、私のことも略称で呼んでくれるかい?」


「………エド、、、先生?」


「ありがとう。これは、思ったよりも嬉しいね。」


そう言いながらエドワードさんが頭を撫でてくれる。その手が優しくて、恥ずかしさを忘れて甘受する。




「「「「「いいとこ取り………」」」」」


心がぽわぽわしていた僕は、みんなの声が耳に入らなかった。

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