ボイスドラマ用台本「サガンパーＶ」

第１話「令和元年の涙雨」⑤

※場所は佐賀県武雄市朝日町たけおしあさひちょう。避難所の小学校にて。時間は午前11時頃。(※)内は演出指示です。<>はセリフ以外の演出ほかシュチュエーション、傍点は佐賀弁。

＜体育館に敷かれたブルーシートの上で＞

勝（まさる）：「(※少し興奮した声で)お母さん！見てみて」

哲人（てつと）：「お憂（ゆう）さん、非常食ば持ってきたよ！」

＜ブルーシートにペットボトルの水と非常食を置く哲人（てつと）、樹（いつき）、勝（まさる）＞

憂（ゆう）：「な～に、これ…(※しばらく間をあける)ご飯？」

樹（いつき）：「水だけで食べれるお米…アルファ米…」

哲人（てつと）：「最近の非常食って凄いな！米にカレーうどん、おでん、おー、このパンとか賞味期限５年ってすごかー。」

憂（ゆう）：「(※呆れた声で)はいはい。こんな非常時に、喜んでいる哲（てつ）ちゃんがすごかよ！」

哲人（てつと）：「さあさあ、志織（しおり）ちゃんもお腹減ってるやろ？腹が減っては戦は出来ぬってね！」

志織（しおり）：「（※お腹を押さえて）急に腹減ってきました。何でもいいから食わせろって感じです。」

憂（ゆう）：「そうね！そうよね！私もとりあえず朝４時から起きて食べることさえ忘れてた…。まずはお腹減ったから、みんなで食べよう。そして、どうするか考えよう！」

明来（あき）：「お母さん？」

憂（ゆう）：「な、何？」

明来（あき）：「このアルファ米って水で戻すのに１時間だって…。熱湯だと１５分みたいだけど…」

憂（ゆう）：「う、嘘！１時間もご飯が食べれないってこと。哲（てつ）ちゃん、お湯は？」

＜哲人（てつと）、あたり一面をキョロキョロと眺める…＞

哲人（てつと）：「あれか！でも凄い行列だ！」

勝（まさる）：「お父さん、行こう！樹（いつき）も一緒に…」

＜行列のできた場所にアルファ米の袋を持って駆け足でむかう３人＞

憂（ゆう）：「志織（しおり）ちゃん、ごめん。明来（あき）を見ていてくれる？哲（てつ）ちゃんの動きが怪しいから、私も見てくる…」

志織（しおり）：「わかりました…（※しばらく間を空ける）明来（あき）ちゃんも…お腹減ってるよね…」

明来（あき）：「志織（しおり）さん…」

志織（しおり）：「な、何？…どがんしたと？」

明来（あき）：「私達、どうなるんですかね…。今も雨は止まない…。家はどうなってるんだろう…。（※悲痛な声で）私、この場所にいるのも、もう嫌！」

志織（しおり）：「明来（あき）ちゃん…私も帰りたい…（※しばらく間を空けやや涙声で）。会社は…（※しばらく間を空ける）Ｓ（エス）カンパニーは私にとっても、家みたいなものだから…」

＜勝（まさる）と樹（いつき）の2人が志織しおりと明来（あき）の所へ戻ってくる。＞

明来（あき）：「勝（まさる）！樹（いつき）！どうだった？お父さんとお母さんは？」

勝（まさる）：「お湯が足りないから、今、沸かしてるんだって…」

樹（いつき）：「水で１時間が早いか…お湯を１５分待つか…」

明来（あき）：「どちらも結局、食べられる時間は変わらなそうね…」

樹（いつき）：「水で食べた人が言ってた。お湯の方がまだいいって。」

明来（あき）：「（※ひややかに呆れた声色で）そ、そう…」

＜しばらく時間が経過したあと、憂（ゆう）と哲人（てつと）がアルファ米を持ってくる…＞

憂（ゆう）：「今から１５分、我慢しましょう！志織（しおり）ちゃんもごめんね…。」

志織（しおり）：「仕方ないですよ…（※やや涙声で）仕方ない…」

哲人（てつと）：「勝（まさる）も樹（いつき）も仕方ないから、非常用のクッキーとか，先に食べとくか？」

勝（まさる）：「うん！食べる。樹（いつき）も食べよ。」

樹（いつき）：「私はまだいい。ご飯を待ってる…」

勝（まさる）：「じゃあ、いただきま～す。」

＜クッキーをムシャムシャと食べる音…＞

勝（まさる）：「う、うまいよ！コレ意外といけるよ」

＜静かに雨音が聞こえる…＞