第1話「令和元年の涙雨」③

※場所は佐賀県武雄市朝日町たけおしあさひちょうエスカンパニー職員寮より。時間は朝8時頃。(※)内は演出指示です。<>はセリフ以外の演出ほかシュチュエーション、傍点は佐賀弁。






<ザーザーとモータボードが水を激しくきる音とモータ音。しばらく後、止まる>




消防の男性B:「ここは水が浅い。モーターを止めて上げますので、私が押しますから、ボートから落ちないようにつかまっておいてください」




<ザーザーという音と消防の男性Bが歩いて水をかき分ける音>




消防の男性B:「"避難所の小学校体育館"まで近づいてきました。ここからは歩いて行けます。皆さん、大丈夫ですか?」




おばちゃん:「私から先におりるわ。次は志織しおりちゃん。あんたたちはウチらが下りるまではボートに。」




子供2人(※構成は②と同じ):「分かった」




<ザザッとボートから降りるおばちゃんの音>




おばちゃん:「志織しおりちゃん、ウチの




志織しおり:「おばさん、ありがとう。」




<ザザッとボートから降りる志織しおりの音>




おばちゃん:「一人は母ちゃんの手ば。もう一人は志織しおりちゃんの握って、ボートから。」




<ザザッとボートから降りる子供2人の音>




消防の男性B:「荷物はちゃんとですか?"避難所の小学校体育館"まで行ける?」




おばちゃん:「ここからなら行けるよ。志織しおりちゃん、ウチの子供もどっちかの手を握ってあげて。」




志織しおり:「はい。私の手ば握ってもらって。」




子供の1人:「うん」




おばちゃん:「あんたは母ちゃんの。」




子供の1人:「うん」




おばちゃん:「志織しおりちゃん、行くよ。体育館まで」




志織しおり:「はい。」




<ペチャペチャっと水が入り込んだ靴が4つ歩く音がしばらく続く…>




おばちゃん:「体育館に




志織しおり:「(※手を握っている子供に向かって)た、助かったね。」




<体育館の階段を上る=ペチャペチャっと水が入り込んだ靴が4つ歩く音>




志織しおり:「つ、着いた…」




<ドンと腰を下ろす音。しばらく、ハアハアという息の切れた声を出す志織しおり…>




ゆう:「し、志織しおりちゃーん。良かったーあ。大丈夫だったね!良かった!」




志織しおり:「(※涙声で)しゃ、~。怖かったです。怖かった、怖かったよ~。」




ゆう:「ウチの家族も全員無事に助かったよ。あっちに皆、集まっているから…。志織しおりちゃんもこっちに…」




おばちゃん:「緒妻おつまさんも大丈夫志織しおりちゃん、。」




ゆう:「ウチの志織しおりを避難してくださってありがとうございました。」


おばちゃん:「助けてもらったとはウチの方。旦那も夜勤で市外の職場からでおる。志織しおりちゃんのと、子供2人連れて、こんなにスムーズには避難できんやったと思う。」




ゆう:「志織しおりちゃん、頑張ったね!まずは早く着替えましょう。着替えはある?」




志織しおり:「はい。い、一応…リュックの中に少しだけ…」




ゆう:「分かった。まず1番に着替えた方が良いよ。更衣室まで行こう」


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