第8話 転生とスキルと少年と少女
◇◇⦅カナン⦆大衆食堂⦅金色亭⦆2階──
フィンは、硬めのベッドに横になりつつ天井を見上げて一人つぶやく
「──ステータス」
目の前にウィンドウが立ち上がり、そこにはフィンの名前とラミーの名前が並んでいる
「とりあえず、俺の方から確認するか──」
フィンは自分のステータスを表示させる。
⦅フィン⦆
性 別:男
種 族:
職 業:
レベル:20
H P:172(172)(金)
M P:84(84)(青)
S P:20(20)
攻 撃:168(金)
防 御:125(銀)
敏 捷:137(銀)
技 力:133(銀)
隠 密:89(青)
魔 力:77(黒)
精神力:92(青)
────────
[スキル]
⦅体術5⦆⦅剣術3⦆⦅棍棒術3⦆⦅火魔法4⦆⦅神聖魔法4⦆⦅統率:小⦆⦅薬草学4⦆
[耐性]
⦅熱4⦆⦅毒5⦆⦅呪3⦆
[ユニーク]
⦅タイマン⦆⦅駿脚⦆⦅自動HP回復:小⦆⦅自動MP回復:小⦆⦅取得経験値up:小⦆⦅取得熟練度up:小⦆⦅取得絆量up⦆⦅念話⦆
「なるほど、
一方で、HPや攻撃力といったレベル依存のステータスは引き継げないみたいだ。これは、アバターに依存する数字ってことかな。」
フィンのレベルが20まで上がっているのは学園都市ダンジョンでのレベル上げによるものである。
ゲーム時代の⦅シミュラクル⦆の
このため、
また、冒険パートの開始時点まではレベル上限が20になっていることもあり、一部のユニークスキルの取得の有無と、誰が⦅パートナー⦆かということを除けばその時点でのプレイヤーのステータス総合値には差異が殆ど出ない仕様になっていたのだ。
続いてフィンは、ラミーのステータスを確認する。
⦅ラミー⦆
性 別:女
種 族:
職 業:
レベル:20
H P:168(168)(金)
M P:24(24)(黒)
S P:20(20)
攻 撃:169(金)
防 御:78(黒)
敏 捷:200(虹)
技 力:174(金)
隠 密:132(銀)
魔 力:28(黒)
精神力:45(黒)
────────
[スキル]
⦅体術3⦆⦅短剣術5⦆⦅罠探知3⦆⦅気配探知5⦆
[耐性]
⦅毒3⦆⦅痛覚2⦆
[ユニーク]
⦅野生の嗅覚⦆⦅健啖家⦆
「ふむふむ、こちらも
俺のようにリセマラした分の継承があるわけでは無いからスキルでは見劣りするが、ステータス面はかなり優秀だ。流石は人気キャラランキング7位ってことだけはあるな」
ただ、やはりこのパーティは完全に⦅前衛⦆に寄り過ぎているように感じる。
今回転生したこの世界も、基本的に火力ゴリ押しの育成方針であるために回復や補助の手段に乏しい。
一応、転生の際に魔法系で育成を終えたキャラクターから⦅神聖魔法⦆と⦅薬草学⦆のスキルを継承してはみたが、ステータス値が引き継げないとなるとMPと魔力が物足りないので連発は難しいかもしれない。
「うーむ。リセマラの仕様が少しわかってきたけど、こっちの世界では、レベルや能力値を上げるよりもスキルの取得・成長をメインに育成しないと俺の強みである転生を上手く使えないな。
あとは、なるだけ多くの災厄を退けて、情報をとらないと、本命の転生先で詰むことになったらもう戻れないからな──と、いうことはどの周回も手を抜くわけにはいかない。そのためにも、まずは回復や補助を担う後衛を揃えていく必要があるか……」
こうした事を考えながら、フィンはこの周回での目標を幾つか立てた。それは以下の通りだ。
⦅この周回の目標⦆
●
● 既存スキルのレベル上げ(各1〜2)
● 新規スキルの取得
⦅体力増大:小⦆⦅魔力増大:小⦆
最低でも、これらはこの世界を周回する上で早めにやっておかなければならないとフィンは思っていた。
まず、災厄に関して──
前回は転生後間もなく発動したにもかかわらず、今回の転生では転生から約1日が過ぎても未だワールドクエストは発動していない。
発動に何らかの条件があるのだろうか?前回の転生では得られた情報があまりに少なすぎる。災厄の出現時期がズレているのか転移した先の時間が異なっているのかもわからない。
また、ルシフェルは前回のラミーは
と、いうことは現在既にラミーは一人でというわけではないにしろ、
今回の周回でも、パーティメンバー次第でなんとか出来るかもしれない。
次に、既存スキルの強化──
これは改めて言うまでもないことであるが、転生での継承がスキルに限られている以上、今持っているスキルを少しずつでも強化していくことが次の周回をよりスムーズに進める上で重要になってくる。伸ばせるだけ伸ばしていきたい気持ちではあるが、ひとまず、各スキル毎の熟練度を1以上あげることを目標にする。
最後に、新規スキルの獲得──
今回挙げた⦅体力増大:小⦆⦅魔力増大:小⦆以外にも有用なものは無数にあるが、転生後の即死を回避する上では基礎ステータスを上昇させるスキルの取得が重要になる。コレらのスキルは取得条件もそこまで難しくはないため、次回の周回に備える意味でも確実に取っておきたい。
◇◇◇
「ま、こんなところか…」
ある程度の情報を整理したあと、フィンは隣で眠るラミーに目をやる。
「ん…んん。フィ〜ン。もう食べられないよぉ…むにゃむにゃ」
あんなに食べたにも関わらず、こいつはまだ夢の中でも何かを食べているらしい。
「──やれやれ、お前はいいよなぁ。ほんと、その性格が羨ましいよ。」
フィンはラミーに毛布をかけ直してやってからランプを消し、自分も眠りについた。
──……
◇◇◇◇
「……ん。んん。」
──……
「…ぐすっ。
少女の寝言は誰にも聞かれる事なく、夜の闇へと消えていった…
◇◇◇
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